「改造例/カスタマイズ・モディファイ例」カテゴリーアーカイブ

ピックガードのエイジド加工例

テレキャスターのピックガードのエイジド加工例です。

上画像は当店で施工させていただいたピックガードのエイジド加工前後の様子です。ギターはFender Custom ShopのCustom TelecasterのRelic品で、塗装部にエイジド加工は加えられていますが少し控えめでバインディングについては焼けた様子まで再現せず、ピックガード、ビス類はエイジド加工なしでした。今回のご依頼では「ピックガードのエイジド加工」だったのですが、がっつり経年劣化・摩耗を再現してしまうとバインディングの明るい色合いとの間に違和感を感じると考えやや控えめな加工にとどめています。

エイジド加工施工前後でギター全体を比較。光の当たり具合で見え方はかなり変わりますが、この比較ではよく見ると加工後の方がピックガードの色がやや濃いのがわかるくらいで遠目に一瞬見ただけだと判別が難しいくらいの差異。
「控えめなエイジド加工」とはいえ、よく見ると使い古した感じ、経年劣化、汚れが表現されているのもわかります。焼けた感じは黄褐色を狙った染色で表現しています。傷が入りにくい弦の下とそれ以外部位で色が違って見えますが、これは手に触れやすい箇所は微細な擦過痕なども再現しているため光の反射具合が大きく変わることによります。上画像でも蛍光灯の写り込み具合がかなり違うことがわかります。比較的汚れやすい部位はほんの少し別の染色も加えて部位ごとの劣化の差も表現してもいます。画像ではわかりにくいですが、黄褐色系の焼けを再現した結果ミントグリーンっぽくも見えます。現在市販されているミントグリーンのピックガードのようなあからさまな色あいではなく「黄褐色に焼けた白層に透けて下の黒層の色合いが加わって緑色っぽく見える」というものです。手脂など汚れが付着しやすいホーン先端側とコントロール側端、カッタウェイの内側などはほんの少し茶系の染色も加えて汚れた雰囲気を表現しています。
ピックガードの上端あたりは比較的汚れが付きやすい部位と考え前画像のホーン部と同様、少しだけ茶系の色合いも加えて汚れた雰囲気を表現。
今回ビスにはエイジド加工を加えていません。もともと綺麗なものが使われていてそれをそのままつけていますが、ビス穴はビスがさびた際に赤錆が付着して汚れた雰囲気を狙って赤茶系の染色を淡く加えてあります。ちゃんと拭き掃除をしてきたギターだと、ネジの頭は比較的きれいでも木部に入りこんでいる部分はさびていることがありますが、それに倣った状態の再現です。お好みで エイジド加工を加えたビスに交換してさらに雰囲気を出すのも良さそうですが、ボディのバインディング材の白さとのバランスを考えるとこのままでもよさそうです。

当店ではピックガードやバックパネル、トラスロッドカバー、各部ノブのエイジド加工も承ております。基本的にはギター・ベース本体ごとお預かりしての施工となります。部品だけを持ち込み・送付してご依頼したいとのお問い合わせもちょくちょくいただくのですが、楽器全体の外観のバランスを考えてエイジド加工をしないと、「エイジド加工した部品だけやけにボロボロで不自然」「傷や汚れの入り方がエイジド加工していない部位と整合性が取れておらず不自然」ということが生じやすいと考えており、部品のみ持ち込みでのご依頼はなるべくご遠慮いただけるようお願いしております。今回の場合、事前にご依頼主様より「レリックモデルだが、ピックガードは通常の新品状態」「バインディングが白い(焼けを再現したエイジド加工はくわえられておらず通常の新品に近い色合い)」とお話もいただいており、実機でもそれを確認したのでピックガードのエイジド加工もそこだけやけに劣化しているようにならないようにバランスを考えて対処しています。完成した状態では正直なところはバインディングの色が少しきれいすぎる印象もあるのですが、本機はラッカー塗装されており、比較的早い段階でトップコートの焼けで真っ白いバインディングが黄褐色に変化するでしょうし、バインディング材自体も色焼けはしてくると思われるので全体の見た目も時間経過とともによりなじんでくると考えています。もっともパーツがすべて同じように劣化するものではなく、材質の違いや塗装の有無の差もあるので見た目の色合いが同じである必要もないでしょう。

以上、プラスチックパーツのエイジド加工の一例としてご参考にしていただければ幸いです。

 

おまけ

いい感じのテレキャスだったのでご依頼主にご許可を頂いてサウンドチェック動画も撮影させていただきました。

クリーン。アンプはFender Vibro King。エフェクトなし。

 

クランチ。歪はWEEHBO Effkte JTM Drive。

 

先のクランチをXotic BB Preampでゲインブースト。

70年代中期Fernandes Fretless PB Typeのレポート

珍しいメイプル指板のフレットレス仕様。

 お客様のご依頼でメンテナンスさせていただいたFernandesのPB Typeのフレットレス仕様です。ロゴから70年代中期のものであるのは間違いないかと思います。持ち主様はフリマアプリで見つけてご購入されていて、そこではFPB-50BLと案内されていたようですが、当時のカタログには掲載のない型番で詳細不明。カタログにはフレットレスモデルが掲載されてはいるのですが本機とはどうも違うようですし、おそらくは既存モデルを基本にしたカスタムオーダーではないかと推察しています。メイプルネックにバインディング付きの貼りメイプル指板、フレットラインはない仕様。弦長はポジションマーカーの位置から一般的なロングスケールより若干短い851mm(約33.5inch)くらいの設計と思われます。指板面はポリ系の塗装がされています。ボディ材はよくわからなかったのですが、やや赤みのある散孔材でラワンのような雰囲気の材でした。今回当店ではネック調整等の基本調整に加えナット溝の修正、PU以外の電気パーツの入れ替え・再配線、ピックガードの止めビスの交換、折れてしまったビスのサルベージとねじ穴修理などです。

メンテナンス後のサウンドチェック動画。

まず指弾き。

 

ピック弾き。

続きを読む 70年代中期Fernandes Fretless PB Typeのレポート

ST Typeギターのレストア/オーバーホール例:1979年製Greco SE800

長期間放置されていたギターの復活!

上画像は1979年11月製造のGreco ST Type、確認できるスペックから型番はSE800です。長期間放置されていたものですが、持ち主様より再びギターを始めるにあたってのメンテナンスのご依頼を頂きレストア/オーバーホールを行わせていただきました。

お預かり時の主な問題点は以下の通り。基本的な調整だけでは全くバランスはとれない状態でした。

  1. ネックの反り・歪み、フレットの摩耗・浮き上がり
  2. アンプにつないでも音が部分的にしか出ない
  3. ネックポケットの謎のシム
  4. 金属パーツの汚れ、腐食

以上を中心にメンテナンスを実施、新品に負けないストラトタイプらしい音と演奏性、経年変化による貫禄が同居する仕上がりにできたかと思います。

ご興味ある方は以下詳細もご覧いただければ幸いです。 続きを読む ST Typeギターのレストア/オーバーホール例:1979年製Greco SE800

試作 TL Thinline Type

個人的に試したいことをぶち込みまくったTL Thinelineタイプ。

こちらのTL Thinelineタイプは既製品のネックとボディを流用して数年前から空いた時間にちょろちょろと制作を進めていたものです。最初はマホガニーボディのバインディング付き60年代風のテレキャスターを作ろうとパーツを集めたのですが、なかなか手を付けずにいるうちに新たに試したいこと検証したいことが出てきたり、そもそもテレキャスターではなくシンラインにしたくなってしまったりと紆余曲折を経て半年ほど前にとりあえず完成しました。「試作品」としているのは同じ路線を継承してさらに試したいことが出てきているのでそのうち2号機、3号機を作ってみようという思惑があるからです。(いつになるかわかりいませんが・・・)

サウンドチェック。6か月張りっぱなしの弦です。クリーン。アンプはFender Vibro Kingでエフェクトなし。

クランチ。歪はWEEHBO Effekte JTM Drive。

 ボディは既製品マホガニー2ピースの60年代風のバインディング付きTLボディが元になっています。シンライン風のホローボディにするためにもともとのザクリを埋めてから全体を薄く削って厚み調整、ホロウボディのザクリ加工、それからハードメイプル材で作成したトップを張り付け。内部の空洞はFenderとは全く異なっていてリードプレイに向くようにサステインがある程度あって低音も効いたサウンドにするために十分な重量を確保しつつ、一方で生音の響きをアコースティックよりにしたいというのもあって実験なども行って試行錯誤し生み出したザクリ形状になっています。結果、目指していた方向に近いものになったと思いますが、満点でとはいかず次に作る際はまた違った仕様を試してみるつもりです。ちなみに完成した本機の重量は約3.5kg、 Fenderタイプのソリッドギターなら普通くらい重量ですが、シンラインタイプとしては劇重です。
木材の振動をなるべく制限しないためにピックガードは一部を除いて少し浮かせて固定、ビスは通常のFender タイプに使われているものより小さなものにしています。完成してから6か月間結構弾き込んだのと塗装はかなり省略した薄いものなのでボディのエッジ部分に塗装欠けができています。
ボディのエッジ部分は匙面加工して見た目のアクセントとしています。バインディングをまいた見た目も好きなのですが、バインディング材も木材の振動をミュートする副作用もあるだろうと考えこの仕様に落ち着きました。
ボディバックはマホガニーです。こちらもエッジ部は匙面加工を施していますが、トップ側よりも幅広。元となった既成品TLボディはバインディングがまかれたものでそれを取り除くために幅を多くとった切削が必要だったため結果的にこうなったという経緯があります。とはいえ見た目も気に行ったので次に制作するときも同じ仕様にするかも。
ネックジョイント部。今回は手触りを無塗装の指板と同じにしようと考えて金属プレートなしでエボニー材(縞黒檀)ラミネイト、エボニー露出部分は無塗装。先端側は握り込みが少しでもやりやすくなることを期待して通常より少し薄くなるようスラントになっていますが効果はイマイチでした。ハイポジションの弾き心地にはもっとシェイプを工夫する必要がありそうです。
ネック。既製品を元にしていますがフレットはステンレス製のナロートールタイプに打ち換え、指板Rはもともと7.25inchでしたがハイポジション側は少し緩くなるように指板修正。仕上げはオイルフィニッシュ。完成して半年経過の時点でステンレスフレットの摩耗はほぼなし、たいしてケアもしていないのですが鏡面研磨した状態も維持されていてその耐久性の高さとメンテナンスフリーであることが体感できました。オイルフィニッシュしたネックの触り心地も今のところいい感じです。これらの長期の耐久性にも関心があって導入した仕様なので引き続き本機を使い込んで様子を見たいと思います。
ヘッド。ノーマルのテレキャスターヘッド。ナット幅は41.0 mmでテレキャスタータイプとしてはかなりスリムな握りです。ペグはGOTOH製の一般的なクルーソンタイプ。ストリングリテイナーもGOTOH製。 ナットはラクダ骨を使用。牛骨に比べてやや高密度だそうですが、加工性や出来上がった仕上がりは大差はありません。最近ちゃんとした牛骨材は値段が上がってきているのでラクダ骨を使う機会が増えてきました。
電気部分は数年前からちょくちょく実験したりお客様のカスタマイズに導入したり、当店の販売品にも導入してきている3×3 way control(後述)。ピックアップはすべてSeymour Duncan、リアSTL-1b Broadcaster、フロントSTR-2 HOT Tele Rythm、ステルスセンターSSL-4。ヴィンテージスタイルのテレキャスター用PUだとネックポジションもトレブルの効いたものが多いですが、私としてはリアとフロントでサウンドキャラクターをもっと明確に分けたいのであえて太い音を出しやすいハイパワーPUをフロントにチョイス。ステルスPUは設置位置の都合上弦からかなり距離があるのでハイパワーなPUをチョイスしていますが、シングルコイル最強のSSL-4でもまだ出力は不足気味。なので、PUの裏にマグネットを追加しています。さらにもう一つ工夫を加えていますがそれは企業秘密。ちなみに本機ではSSL-4はRW(Revers Wiring)ではなくノーマルのものでAditional Modeでのハムキャンセル効果はなし。一方で最近出品したムスタングではハムキャンセルした音が欲しかったのでRWにしています。

3×3way controlでは各モード各ポジションは以下の通り。

3way Position

Aditional Mode1

(Half Tone)

Normal Mode

Aditional      Mode2

(Humbucking)

Neck

F+C

F

F⇒C

Middle

F+C+R

F+R

(F+R)⇒C

Bridge

C+R

R

R⇒C

上表で「+」はパラレル接続、「➾」はシリーズ接続を意味します。3×3 way controlは2PUのギターにもう一つPUを仕込み、追加の3wayスイッチによって3モード3ポジション計9種類のサウンドバリエーションを得る仕組みですが、実際の演奏時は2PUのギターの操作感(「シングルコイル×2のギター」「ハムバッキング×2のギター」の感覚)で行けるので扱いやすさも良好かと思います。ミニスイッチ追加によるサウンドバリエーション拡充の改造は色々ありますがスイッチの数が増えるほど訳が分からなくなりがちで音色数が多くなっても「使わないポジション」ばかりにもなりがちですが、3×3Way Controlであればそうした心配もなく多彩なサウンドバリエーションが得られます。

テレキャスターでの導入例↓

ミニテレキャスターのカスタマイズ/廉価ミニギター徹底調整 | 千葉 船橋 ギター買取り 販売 ・・・ギターショップ Heavy Gauge Guitars

ジャズマスターでの導入例↓

Fender Japan JM66-65(フジゲン期)rebuild | 千葉 船橋 ギター買取り 販売 ・・・ギターショップ Heavy Gauge Guitars

ムスタングでの導入例↓

Fender Japan MG73-CO OCR Special Mod. ¥169,400(税込み) | 千葉 船橋 ギター買取り 販売 ・・・ギターショップ Heavy Gauge Guitars

以上は2PUのギターでの例ですが、最初から3PUのストラトにも採用可能で過去にお客様のストラトに導入したこともあります。5wayスイッチよりも3wayスイッチの方が好みという方やセンターPUを単体で鳴らさない人でハムバッキングサウンドが欲しい人ハーフトーンを呼び出しやすくしたい人などにお勧めです。勿論ストラトの場合でも上表と同じような出力になります。


上のミニテレキャスは4,5年前に最初に3×3way controlを試してみたギター。

Fender JAPAN TC-10R TWEED CHAMP 徹底カスタマイズの例

Fender Japan製のTweed Champ、TC10Rを徹底カスタマイズ!

こちらはお客様からのご依頼でオーバーホール・カスタマイズを行った1990年代製造のFender Japan TC10R、Tweed Champ Reverbです。元々の外観や基本的な回路はそのままですが、ジャックや電源ケーブル、スピーカーケーブルなどの堅牢化、本家Champの特性に近いサウンドとなるMid Boost Modeの追加や、Jensenアルニコスピーカーへの換装、自宅でもボリュームを上げたクランチサウンドを楽しめる3段階のパワーダウンモードの付加など徹底カスタマイズを実施。また、製造から30年近く経過し劣化の懸念がある電解コンデンサーなどもすべて一新。アルニコスピーカーの搭載にあたってはその形状の都合でそのままではキャビネット内には収まらないため、出力管の取り付け位置を変更するといった処置も行いました。Champ系は勿論、オーソドックスなFender系アンプのカスタマイズの例として以下ご紹介します。

サウンドチェック。ギターは当店で制作したTLシンラインタイプ、シールドケーブルはBold Cable FATでアンプ直。アンプのセッティングは動画を通してVolume8(12がフル)、Treble10、Bass12、Reverb5で固定、動画3:08くらいからMid Boostオン、3:55くらいからパワーダウンモード(1/10出力)に切り替えています。ギターボリュームの操作のみクリーン~クランチを行き来してみました。

続きを読む Fender JAPAN TC-10R TWEED CHAMP 徹底カスタマイズの例