大手楽器店の企画商品のミニテレキャスターをちゃんと演奏に耐えるように徹底的に調整を施し、さらにサウンドバリエーションを増やすカスタマイズを追加しました。ミニギターの調整、激安ギターの調整、テレキャスタータイプの改造例として以下紹介いたします。
今回のテレキャスの弦長は570mm。国内で販売されているミニギターでは最もよくみられるスケールです。テレキャスの通常スケールは648mm(約25.5inch)なので、13%ほどダウンサイジングされておりかわいらしい外観です。PUやブリッジ、コントロールプレートは通常サイズのものが流用されているので、これらの交換は比較的容易。ちなみに以前当店で徹底的に調整を加えたES-335風のミニギターはスケールは520mmでした。
元々は新品実売価1万円台という超激安品なので致し方ないのですが、新品時の状態には以下のような問題がありました。
①ペグポストの高さがミニギターとしては高すぎ、特に3,4弦で弦とナットの角度が緩く弦がナットを抑える力が緩く、サステインが極端に短い上、開放弦のビリツキがひどい
②ナット溝が深すぎ、広すぎで弦の振動がヘッド側に逃げまくっていた。また、これにより開放弦のビリツキも発生。これもサステイン不足の要因。
③フレット高さにばらつきがあり音づまりするポジションもある。浮いているフレットもあった。
④フレット上面の仕上げ荒く弦が触れる面が全体的にざらざら。ビブラートやチョーキングがやりにくい。フレットサイドが指板側面からはみ出ている箇所多数(いわゆるバリが出ている状態)、ポジション移動時にひっかかる。
⑤スケールが短いため、一般的な弦だと弦がサドルを抑える力が緩め。今回やや太めの11~52の弦を張ってみたが、そのままではまだサステインが短い感じがした。
⑥オクターブずれ。3wayサドルのノーマルのテレキャスターでは普通に見られる欠点であるが、スケールが短い本機はより顕著。
以下、調整と改造の詳細。
以上が主な調整箇所です。もともと低価格ギターではコスト制限が厳しいため新品時の調整の程度も低く、仕上げも荒いものですが、ミニギターではそれら精度の低さがより顕著に音や演奏性に影響してきます。今回のミニテレもそうですが、「ちゃんと演奏する」ことを前提とするなら購入後の調整は必須かと思います。
次に改造を施した部分の詳細。
3PU仕様のテレキャスターは本家Fenderは勿論、いろいろなブランドから発表されていて、珍しいものではないのですが、今回は「見た目は普通のテレキャスのままにする」と「セレクタースイッチも3wayで普通のテレキャスの使い心地(2PUのギターと同じ感覚で操作できる)」という前提で回路設計を行っています。外観上の違いはミニスイッチが一つ追加されただけですが、このミニスイッチが「モード切替スイッチ」となっていて3種類のモード(便宜上「Fat Tone Mode」、「Normal Tone Mode」、「Bell Tone Mode」としています)から選択できます。それぞれのモード毎に3wayレバースイッチでポジション(「Neck (Front )」「Middle(Mix)」「Bridge(Rear)」)を切り替えます。各モード毎の各ポジションのPU接続は以下の通り。
Bridge Position | Middle Position | Neck Position | |
Fat Mode | R⇒C | (R+F)⇒C | F⇒C |
Normal Mode | R | R+F | F |
Bell Mode | R+C | R+C+F | C+F |
R・・・Rear (Bridge)PU、C・・・Center(Middle) PU、F・・・Front(Neck) PU、⇒・・・シリーズ接続(ハムバッキング)、+・・・パラレル接続
PUの接続方法について知識がないとわかりにくいですが、音色の傾向で言うとFat Modeはいわゆる「ハムバッキングPU」と同様の太いサウンドで「2ハムのギターと同じような感覚で操作できる」となっています。Normal Modeはもともとのテレキャスターと同じ「2シングルのギター」として扱うモード。Bell Modeはすべてのポジションがシングルコイル2つ以上で同時に鳴らす、いわゆる「ハーフトーン」のモードとなっています。Normal ModeとBell Modeは両方ともシングルコイルPUとして出力しますが、サウンドキャラクターとしてはNormal Modeの方がやや太くパンチがあるリード向けサウンド、対してBell Modeの方は若干すっきりした音でカッティングやアルペジオなどのバッキングなどに使いやすい感じになっています。
サウンドチェック。
クリーン。アンプはFender Vibro Kingでエフェクトなし。最初の1分間くらいはNormal Mode、次の1分間はBell Tone Mode、次はFat Tone Mode、残りは適当に切り替えています。
クランチ。歪はWEEHBO Effekte JTM Drive.
先のCrunhをXotic BB Preampでゲインブースト。
今回張った弦はDaddario EXL116というセットで1弦11~6弦52という太目のゲージです。弦高は1弦12フレット1.5mm、6弦は2.0mmに調整しました。ノーマルチューニングでも僕にとっては弦のテンションはまだ緩すぎで、気を付けないとチョーキングが上がりすぎたり、コードの音が濁って気持ち悪くなったりしましたが、慣れれば問題ないレベルかと思います。場合によってはチューニングを高めにセットしたり、弦をもう一段階太いものにしても良いかと思います。