IbanezのArtist Series、1984年製のAR-300のレストア(しばらく放置されていたものを使える状態に復帰)させていただきました。画像左が作業前、右が作業後です。今回はピカピカに再生するのではなく、古さを残しつつ演奏性を回復させるのと、違和感のある破損個所を補修するという方向性です。幸い電気系統は現役で使える状態でしたが、フレット周りの劣化が顕著で、ヘッドエッジ欠けなどがありました。以下レストア作業の詳細。
ボディ表側は塗装部・メッキ部のクリーニングを行い、錆によって機能が失われたビスの交換を行いました。大きな補修を行ったわけではありませんが上の画像でもBeforeとAfterde雰囲気が変わっているのがわかるかと思います。もともとメッキ部はゴールドですが、画像の通り特にピックアップまわりはかなり金色が落ちていました。ビスも元は金メッキだったと思いますが、「古さを生かす」という方向性なので、エスカッションやPU吊り下げビスは周りの雰囲気に合わせてあえてステンレス(メッキなし)ビスなどを使いました。テールピースよりもボディエンド側の三角形の金メッキパーツのビスはブラス製(メッキなし)に交換。これはゴールドパーツの代わりというわけではなく、しばらくたってブラス表面が酸化してくると周りになじむ色合いになると目論んでのチョイス。
画像左は作業前にブリッジやテールピースを取り外したところ。一部錆が激しいですが、太いビスはネジ山部分などしっかり保たれており機能的にはまだ元気な状態です。画像中央、ブリッジサドル回りの隙間にかなりホコリがたまっているのがわかります。こうした汚れは振動の邪魔になるので、しっかり取り除きます。写真は撮っていませんが、このブリッジはさらにサドルを取り外すことができるのでそこまで分解、内部もしっかりクリーニング、ホコリを取り除くのは勿論、メッキが落ちない程度に金属表面のクスミも除去。これによって本来の鳴りを取り戻します。
以前のオーナーさんがストラップピンの位置を移動していてホーン側は茶色いパテで補修してありますが、ボディエンド側は古いビス穴が残ったままでした。どちらも現在のオーナさんには違和感があるとのことで穴を埋め、前の補修後を修正して目立たないようにした上でストラップピンをオリジナルの位置に戻しました。直した箇所だけ新品のようにピカピカにするのはNGなので、周りの使用感になじむように仕上げています。また、ホーン側のストラップピン取り付け箇所は急激なアールがついているので、そのまま取り付けるのは不安です。そこで、ストラップピン側の底面をボディ側(ホーン部先端)のアールに合わせて丸く削り取って形を合わせました。画像右上が完成後の状態で、ストラップピンがボディにめり込んでいるように見えますが、これはボディのかたちに合わせてストラップピンを加工したからです。
ヘッドエッジ部に画像のような欠けがあり、茶色いパテで補修がしてありました。この欠損部はバインディングだけでなく木部にも達していました。今回はこの箇所も補修しました。Afterの画像で分かる通りぱっと見は違和感ないくらいに再生しました。
元々のナットは弦の溝が限界を超えて摩耗していたので新しく牛骨材で作り直しました。
フレットは経年数の割に摩耗は少なめだったのですが、長期間放置されていたためか、浮いているフレットが散見されました。また経年によるバインディングの収縮も見られ全体的にフレットとバインディングの間に隙間ができておりそこに汚れが詰まって固まている状態でした。今回はまず浮いたフレットの打ち直しと再固定、隙間に詰まった汚れの除去し隙間を樹脂で埋めた上でフレット擦り合わせとフレット側面を丸める加工を実施しました。
以上が今回のレストア作業です。長い期間放置されていたギターの電気パーツの交換が必要な場合が多いですが、本機の電気部分は若干のガリが出る程度で接点洗浄のみで問題ない状態になりました。
サウンドチェック。まずはクリーン、アンプはFeder Vibro King。
クランチ。歪はWEEHBO Effekte JTM Drive.
先のクランチをXotic BB Preampでゲインブースト、ミッドはやや絞り気味にしました。