「修理・調整例/リぺア・メンテナンス例」カテゴリーアーカイブ

フレット擦り合わせ Before After ②

 以下の画像は先日当店でやらせていただいたレスポールタイプのフレット擦り合わせの一例です。元の状態はフレット擦り合わせの必要性としては「危急性はないが、やった方がより良い」という程度で、フレットの減りや凹みの程度としては「軽度」と言ってよいギターでした。

 このギターは90年代国内有名メーカーでの製造、現オーナーさんが新品で購入、購入時の価格は実売価で10万円を少し切るくらいだったとのこと。購入後はそれなりに弾いていたものの、ここ10年くらいは弾かれず長期間しまってあったそうです。今回、久しぶりに練習再開したことがきっかけとなりメンテナンスで当店に持ち込まれました。前述の通り元の状態のフレット摩耗度は「軽度」で、弦高を高めにする場合はすり合わせしなくてもまだしばらく大丈夫なくらいでしたが、「せっかく練習再開するのでより弾きやすい状態にしたい」ということでフレット擦り合わせを行ったという経緯です。フレット擦り合わせをすればより弾きやすくなるのは勿論ですが、凹みがある状態の方がフレットの摩耗も早いので、「できるだけフレットを長持ちさせたい」といった場合も有利(勿論すり合わせで不必要に多くフレットを削らないことが前提)です。勿論今回のご依頼主もフレット擦り合わせ後の弾きやすさの向上を強く感じておられました。

ローポジション。擦り合わせ前の画像ではフレットのほんど減りがわからない程度ですが、肉眼視ではもうちょっとはっきりとした凹みが確認できました。ただそれでも「軽度」でした。画像は撮っていないのですが、ミドルポジションも同じように若干の減り・凹みがある状態でした。Afterの画像ではフレット上にちょっと汚れが乗ってしまっている箇所がありますが(写真を撮ったあとふき取りました)、Beforeに比べて見違えるほどきれいになっているのがわかります。この程度の摩耗のフレット擦り合わせならフレットを削る量もわずかであるので、すり合わせ後のフレットの高さに対する違和感も少なく、人によっては「削ったように思えない」と感じる方もいるかもしれません。実際はわずかであっても少しは低くなってはいるのですが、弾きやすさ自体は大幅に向上するため、結果的「すり合わせ前より圧倒的に弾いやすい」となることが多いです。
 ハイポジション。この辺りはフレットの摩耗はごくわずかで凹みもほとんどなかったのですが、一部フレット浮きがあり、そこが音づまりの原因になっていたので同時に修正しています。長期間放置されていたり、弾かない時の保管方法・環境が悪いギターだとこのようなフレットの浮きが生じていることがかなりあります。フレット浮きの修正は可能ですが、修正後にフレットの高さがそろっていないことが多いのでフレット擦り合わせも同時に行う事が多いです。
 ローポジションの画像でもそうですが、BeforeよりもAfterの方が指板の色が濃くなっているのがわかります。これはBeforeの方は元々ローズウッドが有する脂分が抜けてしまって色が薄くなっているのと、Afterの方はフレット擦り合わせ後に指板のオイルケアも行って本来の状態に近づけているため。つまりオイルケアをすることで指板の色は濃くなります。勿論この画像はオイルをべたべたにしみこませているわけではなく、適正に処理しています。
元々はフレットの両端は切りっぱなしで鋭く(矢印の箇所)、左手のポジション移動時にやや引っ掛かりを感じる状態だったのでこれを削り落として引っ掛かりなくスムーズにポジション移動できるように調整しました。いわゆる「フレット両端の丸め加工」というほどではないですが、新品価格10万円くらいまでのギターの新品状態よりはよりはっきりと面取りをした状態です。このくらいまでの加工であれば当店の場合は通常のフレット擦り合わせの作業内と考えていて、料金追加はありません。勿論もっと明確に丸く形を整えたい場合は追加料金で承っています。ただ、その場合は「丸め加工をすれば1弦と6弦の弦落ちは起こりやすくなるかもしれない」という事に留意して判断する必要があります。また細かいことですが、今回はバインディングにもササクレがあり手触りが悪い部分があったのと経年変化のためか指板面と段差ができている箇所もあったのでごくわずかに削って形を整えさせていただきました。Afterの方がバンディングの指板面が白く見えるのはこのためです。

今回は「フレット摩耗度軽度」でのフレット擦り合わせの例でした。ご自身のギターでフレットの減りはそうでもない気がするけど、音のばらつきやビビりが気になる方や「フレットにほんの少しだけ凹みができていて弾きにくいわけではないけどちょっと気になる」といった方は今回のケースに近いと思いますので積極的に擦り合わせを検討しても良いと思います。逆に、本例くらいの摩耗で弾いていて全く気にならない場合や、「フレット擦り合わせせず、限界まで使ったらフレット交換する」といった考え方、予算の都合ですぐにフレット擦り合わせはできない方は弦高などのセッティングを見直すのみでそのままの状態で弾き続けても良いかと思います。もっとも、こういった判断はフレットの全体的な摩耗量だけでなく、その偏り(一般的によく弾くポジションの減りの方が早い)、ネックの反り具合、ナットの摩耗量、そのネックの振動の傾向などなどいろいろな要素によっても変ってくるので、フレットの減り具合だけで判断できないことも留意する必要があります。「自分では判断できない」という方も多いかと思いますので、そういった方は遠慮なく当店にご相談ください。

以上、メンテナンスするかどうか悩まれてる方のご参考にしていただければ幸いです。

低価格エレキベースのフレットメンテナンス例

こちらのSQUIRE Precision Bassのフレット周りのメンテナンスを行いました。

こちらのプレシジョンベースはFenderのジュニアブランドSquireのもので新品の実売価は3~4万円くらいの価格帯です。このくらいの価格帯になるとメーカーも製造コストがかなり厳しく制限を受けるためか基本的な調整が半端な状態で売られていることが多いと思います。本機の場合、2004年製で製造からの経年変化も加わっているとは思いますが、新品でも本機の元の状態と同様なネック回り・フレット周りであることは珍しくなく、それが原因で初心者さんの練習モチベーションが左右されてしまったりもあると思います。低価格品であってもメンテナンスを加えることで弾き心地は激変し、初心者さんの最初の一本として長く付き合って行ける楽器になり得ます。以下、今回行ったフレット周りのメンテナンスのBefore/Afterを紹介します。

Before:フレット表面は曇り、指板は脂分が抜けて色が薄くなっています。減りはそれほど多くはなく、目立つ凹みもありませんが・・・
Before:横から見たところ。遠目にはわかりにくいですが、実はフレットの端の鋭くなっている部分がちょっこっとはみ出ている部分が多数あり、左手のポジションチェンジで引っ掛かりが多発する状態。そのままでは下手をすると怪我をすることも。そして、画像下段左のフレットは少し浮いています。こうしたフレット浮も何か所かありました。
本機に打たれているフレットはこの画像のフレットのように指板端の足をカットして打ち込まれています(赤矢印の箇所)。つまり前の画像でフレットが浮いてる部分の下は完全に「隙間」ができてしまっている状態。こうなるとかなり切っ先が鋭く演奏にも支障が出やすいです。

今回のベースの場合、まずフレット浮きの修正を行いました。具体的にはまず浮いたフレットを改めて指板に叩き込む作業を実施。叩いて修正した後しばらくすると再び浮き上がってしまうこともあるので、しばらく時間をおいてから再度チェック、若干ですが再び浮き上がっている箇所があり、そういったところは接着剤を注入して再固定を図っています。「フレットを接着する」というのではなく「フレットが打ち込まれている溝の隙間を埋める」という目的です。フレットに接着剤を使うというのはなじみがない方も多いと思いますが、実はメーカーで制作されている高価格帯のギターでもフレットを打ちこむ際に接着剤を併用している例はたくさんあります。そうしてフレットをしっかり固定した状態でフレットの高さに若干ばらつきがあったので擦り合わせ(フレットを削って高さを揃える作業)を実施。といっても高さの差はわずかでもともと目立つ凹みもなかったフレットなので擦り合わせで削った量はわずかです(0.05mm未満)。そしてフレット両端の鋭い部分を削り落とし(丸め加工)を加え左手移動時の引っ掛かりを解消、最後に脂分が抜けた指板のオイルケアをして完了。ローズウッドやエボニーは脂分が多い材なので、オイルケアも結構大事です。

以下Afterの状態をご覧ください。

After:メンテナンスが完了した指板&フレット。フレットはピカピカにした方が音もしっかり発音させやすく、伸びも得やすくなります。当然演奏性も向上します。指板の色合いがBeforeよりもかなり濃くなっていますが、それだけ元の状態では脂分が抜けてカサカサになっていたという事です。
After:フレット端。Beforeの状態に比べてかなり丸くなっているのがわかります。これにより引っ掛かかりは解消、弾き心地がかなり向上しています。

今回のメンテナンス例は「新品売価3~4万くらいの低価格機で足りない部分を補って質を大きく向上させる」という例です。メンテナンスの内容としては高級な楽器でも行うもので、買ったばかりの楽器でも「なんか弾きにくい」「なんか音がヘン」といった場合に今回同様の基本的なメンテナンスで化けてくれることはよくあります。お手持ちの楽器でお心当たりがあれば是非ご相談ください。

フレット交換に伴う指板修正の例/指板修正でネック反り補正

フレット交換・指板修正のためフレットを抜いた状態のジャズベースタイプネック2本。上は2014年製Fender Japan JB62のネック、下は1977年製のGreco JB450Sのネック。

フレットを交換する際には「指板表面を薄く削って平滑な面に整える作業」が伴いますが、当店ではこれを「指板修正」と呼んでいます。この作業の主な目的は以下の①ですが、ネックの状態によって②も加わります。また場合によって②のためにあえて摩耗していないフレットを交換するという選択肢もあります。

①指板表面の凹凸を解消して平滑な面に修正、弾きやすさを向上させる。また新しいフレットを打った際のばらつきを極力減らし、フレット擦り合わせでフレットを削る量・フレットごとの削る量の差をできるだけ少なくする。

②ネックの順反りの補正、ハイ起きの補正。

①だけが目的の場合は指板のローポジションからハイポジションまで一様にごく薄く切削、研磨しますが、②も伴う場合はネックのローポジション側またはハイポジション側、あるいはその両方をミドルポジションよりも多めに削ることになります。つまり、指板を削ることで曲がってしまったネックの直線性を作り直します。当然ながらいくらでも削ってよいわけではなく、状況に応じて少し削るといった感じです。今回の例の2本のジャズベースのネックはいずれも②も目的に加えて指板修正を行いました。 続きを読む フレット交換に伴う指板修正の例/指板修正でネック反り補正

ST Type コンポーネント制作

既成パーツで組み上げさせていただいたST Type。

お客様のご依頼でコンポ―ネント制作したST Typeです。パーツは基本的にお客様がお好みのものを持ち込んで、当店ではそれらを必要に応じて微修正を加えたうえで組み上げ、調整を行わせていただきました。

今回はUSA製のボディとネック(それぞれ別ブランド)、Fender純正のトレモロ、PU、現行クルーソンペグ等をお客様が持ち込まれ、それらを元にスタンダードなストラトキャスターとなるように仕上げさせていただきました。

サウンドチェック。アンプはFender Vibro King。最初にWEEHBO Effkte JTM Driveで歪ませたクランチ。

先のクランチをXotic BB Preampでゲインブースト。

最後にクリーン。シールドケーブルはBold Cable FATでアンプ直。

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1984年製 Ibnaez AR-300 レストア Before/After

IbanezのArtist Series、1984年製のAR-300のレストア(しばらく放置されていたものを使える状態に復帰)させていただきました。画像左が作業前、右が作業後です。今回はピカピカに再生するのではなく、古さを残しつつ演奏性を回復させるのと、違和感のある破損個所を補修するという方向性です。幸い電気系統は現役で使える状態でしたが、フレット周りの劣化が顕著で、ヘッドエッジ欠けなどがありました。以下レストア作業の詳細。

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