「修理・調整例/リぺア・メンテナンス例」カテゴリーアーカイブ

ピエゾPU搭載ストラトの例

L.R.Baggsのピエゾ搭載シンクロトレモロに換装されたFender Deluxe Stratocaster。

上画像はL.R.Baggsのピエゾ搭載シンクロトレモロに換装されたFender Deluxe Stratocaster、音がイマイチとのことで再セットアップのご依頼をいただいたものです。持ち主様は本機を中古で購入されていますが購入時すでX-Bridgeに換装されており3wayのミニスイッチで「①マグネティックPU」「②マグネティックPU+ピエゾPU」「③ピエゾPU」と切り替え、マグネティックPUのボリューム、ピエゾのボリューム、マグネティックPUのトーン(ピエゾはトーンレス仕様)となっていました。とりあえずサウンドチェックしたところ、①の音がハイ落ちした痩せた感じの音であること(ベースでよく見るボリューム逆配線にされていました)、③の音はピエゾ的な音ではあるもののエレアコのようなサウンドとはだいぶ異なっていてトーンも効かずプリアンプも介さない音でもあり正直なところそのままでは使いにくい感じでした。②についてはピエゾ単体の音に比べてバランスが良くエレキのアンプのセッティングでも問題なく使えそうな感触でした。操作系もややこしくお世辞に使いやすいとは言えなかったと思います。

以上踏まえて以下のように電気パーツの変更・配線変更・再セットアップを実施。

①マグネティックPUのボリュームは通常の配線(本機搭載のPU Fender Vintage Noiselessに付属の配線案内の通り)に変更。②の配線と合わせることでピエゾon時にマグネティックPUのボリュームを絞るとピエゾの特徴が際立ち、絞り切るとピエゾの音も含めてミュートとなる。

②ピエゾ単体のモードは削除、ミニスイッチは2wayに変更。ピエゾのボリュームは逆配線にしてこのボリュームを0にしてもマグネティックPUは出力するようにする。

③トーンはピエゾmix時も効くマスタートーンに変更。

以下詳細。

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パッシブ化・ハムキャンセルコイルをPU化したFernandes FAB-170

80年代初頭に製造されていたFernandes のアレンビック風アクティブベースFAB-170をパッシブベース化。

上画像は当店でパッシブ化をさせていただいたFernandes FAB-170です。1980年前後に流行したアレンビックに影響を受け国内の各社からも追随機種が発表されていたものの一つで勿論元々はアクティブサーキット、パライコの搭載、専用外部機器をつないで多彩な音づくりができるというかなり凝った機種ですが、経年劣化や故障のためか音がちゃんと出ない状態になってしまっていました。今回ご依頼主様により元のピックアップはそのまま生かしたパッシブベースへ換装しました。

見た通り3PU仕様です。パッシブ化にあたり元々ついていたアクティブサーキット基盤やロータリースイッチなどはすべて取り外し新しいPOT等で配線し直しました。パッシブ化にあたって使用しないミニスイッチやロータリースイッチの取り付け穴は画像の通りブラス製のローレットワッシャーとビスで塞ぎました。4つあるノブは3つのPUそれぞれのVolumeとMaster Tone、ミニスイッチはセンターPUのOn/Off。センターPUは当時のカタログにも「ハムキャンセル用PU」と紹介されていて、実際にそのままではごく小さな音量しか出ないPUですが、後述の追加パーツによって単体のPUとしても機能するようにしました。このPUの内部構造は不明ですが、おそらくはコイルの仕様はリアとフロントPUと共通、ごく弱いマグネットが入っているか、ひょっとしたらマグネットは入っていない(両隣のPUの磁界の影響でハムキャンセル信号を出力?)と思われます。
ハムキャンセル用のセンターPUを音を出力するための単体のPUとして機能させる目的で制作したパーツ。縞黒檀材に直径10mmのマグネットを仕込んだだけのもので 、
「外付けマグネットポールピース」とでも言えばわかりやすいでしょうか。希少な機種でもありボディにねじ穴などはあけたくないので今回は両面テープで貼り付けるだけにしてあります。
画像左は外付けマグネットポールピースをつけていない状態。このままではセンターPUは音量が小さすぎて使いようがないですが、フロントとリアの2PU仕様と考えればこの状態でも構わないと思います。画像右は外付けマグネットポールピースを貼り付けた状態。こうするとセンター単体でも十分な音が得られます。センターPUはミニスイッチでON/OFFできるようにしてあるので、例えばフロントまたはリアU
単体の音から素早く2PU Mixサウンドに切り替えたりできます。

外付けマグネットポールピースの有無でセンターの音がどうなるかの実験動画。元の状態では音量が極端に小さいのが十分な音になるのがわかります。

 オリジナルではアクティブサーキットでノイズが少なかったからなのか弦アースは配線されていませんでした。今回ブリッジ下のサステインブロックの底面にアースをつないで赤矢印の箇所からコントロールキャビティへ穴をあけアース線を配線。
 テールピースは3本のブラス製のビスでとめられていましたが腐食により脆くなっており真ん中の一本は折れてしまったので折れたビスの箇所はそのまま、残り2本は強度も稼げるステンレス製ビスに交換で対処。
左はパッシブ化したサーキット。ベースではオーソドックスな配線・パーツ構成になっています。右は元々収められていたオリジナルのサーキット。プリアンプ基盤にはオペアンプが3つのっています。二つあるミニスイッチやスタックPOTはパラメトリックEQのコントロールだったもの。基盤の左上のノブのついた物体は4wayのロータリースイッチです。このタイプのロータリースイッチがギター・ベースに使われているのは初めて見ましたが現行でもほぼ同仕様のスイッチが流通しています。小型なのでキャビティのスペースが限られたギター・ベースの改造用には良いかもしれません。オリジナルではこのスイッチによって「フロント」「ハムキャンセルのフロント」「ハムキャンセルのリア」「リア」を切り替えるようになっていたようです。弦アースを省略するくらい低ノイズだったのにハムキャンセルの音が必要だったのか、ハムキャンセル無しの音と差があったのか?ですが・・・何かほかの理由があったのでしょうか?知っている人がいらっしゃたら是非教えてください。

サウンドチェック。

 

さすがにアクティブで使用する前提のPUなのでパッシブで使う際のアンプの音量は結構大きめでちょうど良いくらいでした。元々スイッチが3つも付いていてパッシブ化にあたってそれを生かすことも考えてセンターPUのOn/Offスイッチを設置したのですが、さらに3wayのスイッチを増設して2PUのギターのように「リア」⇔「リア+フロント」⇔「フロント」の切り替えもできるようにしても面白いかもしれません。ベースではあまりこういったスイッチは付けずに各ボリュームで混ぜ具合を調整するスタイルが主流ですがギタリストがベースを使用する場合にはなじみやすい仕組みかと思います。

フレットすり合わせの例:Fender American Vintage 62 Jazz Bass

フレットすり合わせをさせていただいたFender Jazz Bass。

上画像は音詰まり等の症状で当店に持ち込まれたFender American Vintage 62 Jazz Bassです。フレットの摩耗・凹みに加えて浮き上がりも多発していました。以下フレットすり合わせの一例としてレポート。 続きを読む フレットすり合わせの例:Fender American Vintage 62 Jazz Bass

70年代中期Fernandes Fretless PB Typeのレポート

珍しいメイプル指板のフレットレス仕様。

 お客様のご依頼でメンテナンスさせていただいたFernandesのPB Typeのフレットレス仕様です。ロゴから70年代中期のものであるのは間違いないかと思います。持ち主様はフリマアプリで見つけてご購入されていて、そこではFPB-50BLと案内されていたようですが、当時のカタログには掲載のない型番で詳細不明。カタログにはフレットレスモデルが掲載されてはいるのですが本機とはどうも違うようですし、おそらくは既存モデルを基本にしたカスタムオーダーではないかと推察しています。メイプルネックにバインディング付きの貼りメイプル指板、フレットラインはない仕様。弦長はポジションマーカーの位置から一般的なロングスケールより若干短い851mm(約33.5inch)くらいの設計と思われます。指板面はポリ系の塗装がされています。ボディ材はよくわからなかったのですが、やや赤みのある散孔材でラワンのような雰囲気の材でした。今回当店ではネック調整等の基本調整に加えナット溝の修正、PU以外の電気パーツの入れ替え・再配線、ピックガードの止めビスの交換、折れてしまったビスのサルベージとねじ穴修理などです。

メンテナンス後のサウンドチェック動画。

まず指弾き。

 

ピック弾き。

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ST Typeギターのレストア/オーバーホール例:1979年製Greco SE800

長期間放置されていたギターの復活!

上画像は1979年11月製造のGreco ST Type、確認できるスペックから型番はSE800です。長期間放置されていたものですが、持ち主様より再びギターを始めるにあたってのメンテナンスのご依頼を頂きレストア/オーバーホールを行わせていただきました。

お預かり時の主な問題点は以下の通り。基本的な調整だけでは全くバランスはとれない状態でした。

  1. ネックの反り・歪み、フレットの摩耗・浮き上がり
  2. アンプにつないでも音が部分的にしか出ない
  3. ネックポケットの謎のシム
  4. 金属パーツの汚れ、腐食

以上を中心にメンテナンスを実施、新品に負けないストラトタイプらしい音と演奏性、経年変化による貫禄が同居する仕上がりにできたかと思います。

ご興味ある方は以下詳細もご覧いただければ幸いです。 続きを読む ST Typeギターのレストア/オーバーホール例:1979年製Greco SE800