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Stratocaster 3×3Way Control導入例

Heavy Gauge Guitarsにてメンテナンスと3×3 Way Control導入をやらせていただいたフジゲン期Fender Japan ストラト!

 上画像はフジゲン期(1993~94年製造)のFender Japan Stratocaster ST57-70です。Heavy Gauge Guitarsにてフレット等のメンテナンスと電気部分は当店考案の「3×3 Way Control」へカスタマイズを実施させていただきました。今回ご依頼主様のご許可を頂き、3×3 Way Control導入の一例として紹介いたします。

3×3 Way Controlというのは3wayのポジションセレクターにもう一つモードセレクターとしての3wayスイッチを組み合わせることで9種類の音色を確保できる配線になります。スイッチ追加のカスタマイズ例は数多あり、スイッチが増えることで直感的な操作からほど遠くなったり、同じサウンドのポジションが複数できてしまったりといったデメリットもありますが、当店の3×3Way Controlの場合は単に音色数が増えるだけでなくそれらが比較的直観的に操れる点が特長です。今回の場合、レバースイッチを5wayから3Wayに変更、センタートーンを3Wayのロータリースイッチに変更し、レバースイッチを「Neck Position」「Mix Position」「Bridge Position」の切り替え、ロータリースイッチを「シリーズ接続(Fat Tone Mode)」「ノーマルシングルコイル(TL Mode)」「ハーフトーンシングルコイル(Bell Tone Mode)」の切り替えを担います。具体的には下表のとおり。

3×3way Controlのポジションニング

Rotary Position

3way Position

Fat Tone Mode

TL Mode

Bell Tone Mode

Neck

F⇒C

F

F+C

Middle

(F+R)⇒C 

F+R

F+C+R

Bridge

R⇒C

R

C+R

+・・・パラレル接続(いわゆるハーフトーン) 

⇒・・・シリーズ接続(2つ以上のコイルをハムバッキングPUと同様に接続。ただし本機のPUの場合、逆磁極逆巻の組み合わせはないのでハムキャンセルはなし。)

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中古ギター・ベースの出品前のメンテナンス例:Gibson SG Standard 2000年製

すでに売り先が決まっている2000年製のSG、メンテナンス内容を紹介。

画像のSGは2000年製のGibson SG Stnadardです。すでに売り先が決まっているのですが、中古品として販売する前にどういったメンテナンスを加えているかの例として紹介します。興味がある方は以下ご参照ください。

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フレット擦り合わせ Before After ⑤

メイプル指板のストラトのフレット擦り合わせ例。一番顕著な凹みが見られたローポジション。このあたりの擦り合わせ後のフレット高さ(指板表面からの高さ)は0.8mmほど。切削量は0.1~0.15mm未満。

フレット擦り合わせBefore/Afterの5例目はFender Japanの54年タイプストラト。メイプル指板にヴィンテージスタイルの細いフレットが打たれたギターです。当店に持ち込まれた際の持ち主様の訴えは「いくらチューニングをしても音程が合わない」「やたらと音づまりやビリツキが出るので弦高をどんどん高くしていったが、調整しきれない」というものでした。点検したところ、以下の症状を確認。

①極端なネックの順反り。トラスロッドの余裕が十分ではなくトラスロッドだけでは適切な状態にできない。

②交換されたナットの弦溝が浅すぎて1弦の弦高が極端に高く、6弦1フレットを押さえると1音近く音程がシャープしてしまう

③フレット摩耗はローポジションのプレーン弦側は顕著

④ハイポジションはかなりの弦高(1弦12フレット2.2mmくらい)にしても1弦ハイポジションの1音チョーキング時に音が完全に詰まってしまう。極端な反りで「ハイ起き」と同様の状態。

 フレットの摩耗量もまあまあありましたが、それ以外の部分がかなり問題でした。元々オークションで入手したとのことで以前のオーナーさんも自分で調整・修理しようとして断念して売りに出したのかもしれません。

今回フレットの摩耗は2フレットが最もありました。減りの程度としては中程度~重度でしたが、演奏性も含めて考えるとぎりぎりフレット擦り合わせ適応と判断しました。次はフレット擦り合わせではなく、フレット交換をした方が良いと思いますが、それまで十分弾きこめる状態を確保できています。また、ネックの順反り調整の補完のために若干程度の減りだった15フレット以上のハイポジションも敢えて多めに擦り合わせしています。これによって最終的に1弦12フレットの弦高を1.6mmくらいまで下げても1音チョーキングくらいは問題なく、1音半チョーキングではビリツキが出るものの、詰まりはしない程度までになりました。

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フレット擦り合わせ Before After ④

フレット擦り合わせBeforeAfterの4例目。今回もレスポールタイプ。

フレット擦り合わせの例 Before/After④、今回も②③に引き続きレスポールタイプです。今回のレスポールはGibson Custom Shopの54年モデル。かなり弾きこまれたギターでフレット交換が行われている上にすべてポジションにわたって摩耗、押弦による凹みができているという演奏性にもかなり難アリな重症でした。上の画像は7フレットの擦り合わせ前と後の比較で一番減りが顕著だった箇所。このポジションの擦り合わせ前の凹みのない箇所でフレット高さが1.2mm弱、フレット擦り合わせ後は1.1mmくらいに仕上がっています。なるべく削量が少なくなるように時間をかけて丁寧に擦り合わせを行い、すり合わせ前の凹みの底部の高さと他の部分が同じになるように擦り合わせています。これによって押弦時の指先と指板の距離は変わらず、押さえた感触に違和感はありません。勿論、フレットの形も整え、全体の凹凸もなくなることで演奏性は劇的に向上しています。

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フレット擦り合わせ Before After ②

 以下の画像は先日当店でやらせていただいたレスポールタイプのフレット擦り合わせの一例です。元の状態はフレット擦り合わせの必要性としては「危急性はないが、やった方がより良い」という程度で、フレットの減りや凹みの程度としては「軽度」と言ってよいギターでした。

 このギターは90年代国内有名メーカーでの製造、現オーナーさんが新品で購入、購入時の価格は実売価で10万円を少し切るくらいだったとのこと。購入後はそれなりに弾いていたものの、ここ10年くらいは弾かれず長期間しまってあったそうです。今回、久しぶりに練習再開したことがきっかけとなりメンテナンスで当店に持ち込まれました。前述の通り元の状態のフレット摩耗度は「軽度」で、弦高を高めにする場合はすり合わせしなくてもまだしばらく大丈夫なくらいでしたが、「せっかく練習再開するのでより弾きやすい状態にしたい」ということでフレット擦り合わせを行ったという経緯です。フレット擦り合わせをすればより弾きやすくなるのは勿論ですが、凹みがある状態の方がフレットの摩耗も早いので、「できるだけフレットを長持ちさせたい」といった場合も有利(勿論すり合わせで不必要に多くフレットを削らないことが前提)です。勿論今回のご依頼主もフレット擦り合わせ後の弾きやすさの向上を強く感じておられました。

ローポジション。擦り合わせ前の画像ではフレットのほんど減りがわからない程度ですが、肉眼視ではもうちょっとはっきりとした凹みが確認できました。ただそれでも「軽度」でした。画像は撮っていないのですが、ミドルポジションも同じように若干の減り・凹みがある状態でした。Afterの画像ではフレット上にちょっと汚れが乗ってしまっている箇所がありますが(写真を撮ったあとふき取りました)、Beforeに比べて見違えるほどきれいになっているのがわかります。この程度の摩耗のフレット擦り合わせならフレットを削る量もわずかであるので、すり合わせ後のフレットの高さに対する違和感も少なく、人によっては「削ったように思えない」と感じる方もいるかもしれません。実際はわずかであっても少しは低くなってはいるのですが、弾きやすさ自体は大幅に向上するため、結果的「すり合わせ前より圧倒的に弾いやすい」となることが多いです。
 ハイポジション。この辺りはフレットの摩耗はごくわずかで凹みもほとんどなかったのですが、一部フレット浮きがあり、そこが音づまりの原因になっていたので同時に修正しています。長期間放置されていたり、弾かない時の保管方法・環境が悪いギターだとこのようなフレットの浮きが生じていることがかなりあります。フレット浮きの修正は可能ですが、修正後にフレットの高さがそろっていないことが多いのでフレット擦り合わせも同時に行う事が多いです。
 ローポジションの画像でもそうですが、BeforeよりもAfterの方が指板の色が濃くなっているのがわかります。これはBeforeの方は元々ローズウッドが有する脂分が抜けてしまって色が薄くなっているのと、Afterの方はフレット擦り合わせ後に指板のオイルケアも行って本来の状態に近づけているため。つまりオイルケアをすることで指板の色は濃くなります。勿論この画像はオイルをべたべたにしみこませているわけではなく、適正に処理しています。
元々はフレットの両端は切りっぱなしで鋭く(矢印の箇所)、左手のポジション移動時にやや引っ掛かりを感じる状態だったのでこれを削り落として引っ掛かりなくスムーズにポジション移動できるように調整しました。いわゆる「フレット両端の丸め加工」というほどではないですが、新品価格10万円くらいまでのギターの新品状態よりはよりはっきりと面取りをした状態です。このくらいまでの加工であれば当店の場合は通常のフレット擦り合わせの作業内と考えていて、料金追加はありません。勿論もっと明確に丸く形を整えたい場合は追加料金で承っています。ただ、その場合は「丸め加工をすれば1弦と6弦の弦落ちは起こりやすくなるかもしれない」という事に留意して判断する必要があります。また細かいことですが、今回はバインディングにもササクレがあり手触りが悪い部分があったのと経年変化のためか指板面と段差ができている箇所もあったのでごくわずかに削って形を整えさせていただきました。Afterの方がバンディングの指板面が白く見えるのはこのためです。

今回は「フレット摩耗度軽度」でのフレット擦り合わせの例でした。ご自身のギターでフレットの減りはそうでもない気がするけど、音のばらつきやビビりが気になる方や「フレットにほんの少しだけ凹みができていて弾きにくいわけではないけどちょっと気になる」といった方は今回のケースに近いと思いますので積極的に擦り合わせを検討しても良いと思います。逆に、本例くらいの摩耗で弾いていて全く気にならない場合や、「フレット擦り合わせせず、限界まで使ったらフレット交換する」といった考え方、予算の都合ですぐにフレット擦り合わせはできない方は弦高などのセッティングを見直すのみでそのままの状態で弾き続けても良いかと思います。もっとも、こういった判断はフレットの全体的な摩耗量だけでなく、その偏り(一般的によく弾くポジションの減りの方が早い)、ネックの反り具合、ナットの摩耗量、そのネックの振動の傾向などなどいろいろな要素によっても変ってくるので、フレットの減り具合だけで判断できないことも留意する必要があります。「自分では判断できない」という方も多いかと思いますので、そういった方は遠慮なく当店にご相談ください。

以上、メンテナンスするかどうか悩まれてる方のご参考にしていただければ幸いです。