フレット擦り合わせ Before After ④

フレット擦り合わせBeforeAfterの4例目。今回もレスポールタイプ。

フレット擦り合わせの例 Before/After④、今回も②③に引き続きレスポールタイプです。今回のレスポールはGibson Custom Shopの54年モデル。かなり弾きこまれたギターでフレット交換が行われている上にすべてポジションにわたって摩耗、押弦による凹みができているという演奏性にもかなり難アリな重症でした。上の画像は7フレットの擦り合わせ前と後の比較で一番減りが顕著だった箇所。このポジションの擦り合わせ前の凹みのない箇所でフレット高さが1.2mm弱、フレット擦り合わせ後は1.1mmくらいに仕上がっています。なるべく削量が少なくなるように時間をかけて丁寧に擦り合わせを行い、すり合わせ前の凹みの底部の高さと他の部分が同じになるように擦り合わせています。これによって押弦時の指先と指板の距離は変わらず、押さえた感触に違和感はありません。勿論、フレットの形も整え、全体の凹凸もなくなることで演奏性は劇的に向上しています。

ネック全体。この画像では分かりにくいですが、フレット施工前は渡ってポジションにわたってフレット全体の摩耗と弦による凹みができています。クスミや指板の汚れも結構ありました。
ローポジション。ここまで拡大すると擦り合わせ前のフレット上の凹みもはっきりわかると思います。実物は画像で見るよりもっとはっきりとした凹みでした。
ミドルポジション。今回のギターの場合7フレットの3弦あたりが一番摩耗、凹みが深かったのですが、そこだけ突出しているのではなくプレーン弦は1フレットから最終フレットまで万遍なく摩耗していました。一般的にプレーン弦側のローポジションだけ摩耗が多いというパターンが圧倒的に多く、次いでミドル~ハイポジションのプレーン弦側が比較的多く摩耗しているというパターンが多いのですが、今回のようにローからハイまで万遍なく摩耗、凹みができているというのは珍しいです。この楽器の前オーナーさんはリードギターの練習を主体にかなり弾きこんでいたのでしょう。
ハイポジション。よく見るとプレーン弦側は弦が各フレット各弦が乗る箇所に凹みができていたのがわかります。今回の擦り合わせに際して、低い弦高でも、1弦ハイポジションのチョーキングに音がしっかり伸びるように19~最終フレットのRが若干緩くなるように削っています。
さらに拡大。12フレット。
19フレット。
フレット端、ローポジションの6弦側。擦り合わせ前は左手の移動時にかなり引っ掛かりを感じる状態でフレットとバインディングの隙間に汚れがたまっている箇所も散見されました。そのままだと弾きにくいのは勿論、隙間に入り込んだ汚れがエボニー指板上フレット浮気を誘発する恐れもあったので、必要に応じて隙間は樹脂で埋めたうえでフレット端の面取り加工も加えました。
フレット端、ハイポジション1弦側。

今回の例は擦り合わせ適応の例としては比較的重症な例でした。フレットはジャンボサイズで元々高さに余裕もあるものだったので、まだフレット交換せずに弾きこむことが可能かと思います。ただ、フレット交換直後の摩耗がほとんどない状態と比べれば、おそらく0.15~0.2mmは低くなっていると思われます。小さい数字ではありますが、私はフレットの高さの変化としては0.1mmは結構大きい数字だと考えています。今回のフレット擦り合わせで現状で最高の演奏性は確保できたと思いますが、弾き心地は新品フレットとはかなり違っているはずで、このことはフレット交換の際にどんなフレットに打ち替えるかの大事な判断材料になるので、一本のギターと長く付き合っていくためにも留意したいところです。

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