「修理・調整例/リぺア・メンテナンス例」カテゴリーアーカイブ

ウェンジネックのCharvel MJ Dinky24レポート

日本製のCharvel Dinky、エレキギターでは珍しいウェンジネック仕様。

上画像は当店でメンテナンスさせていただいたCharvel MJ Dinky DK24 HSH EMAH Naturalです。型番の意味するところは「日本製の24フレットネックのディンキー、ピックアップはHSH配列、エボニー指板にマホガニーボディ、材の木目を生かしたナチュラル仕上げ」といったところでしょう。ウェンジ材のネックは先駆者のwarwickをはじめIbanezなどのベースでは導入されて久しいですが、ギターでは珍しい仕様で興味深かったのでご依頼主様にご許可を頂いた上でレポートを残させていただくこととなりました。ご興味ある方は以下ご覧いただければ幸いです。

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ビザールギターのメンテナンス例:60年代後期製 Arai Diamond 1532T

60年代後半の短期間だけ製造されていたAraiブランドのギター、Diamond 1532Tのメンテナンスをさせていただきました。

 上画像は当店でメンテナンスさせていただいたArai Diamond 1532Tというギターです。ビザールギターファンの間では知られた機種だそうで、Fender JazzmasterやJagugar風のトレモロを搭載しているあたりは当時流行していたサーフミュージックを意識したのでしょうか。Araiブランドは荒井貿易のもので、その後はAria ProⅡというブランドに代わり現在に至っています。

 お預かり時は指板には音詰まり箇所が散見され、電気部分もスイッチは緩くなりすぎていて勝手に切り替わってしまう、ボリュームとトーンもガリなどがあり不調といった具合で音は出るものもその音色も何かがおかしいといった状態(ご依頼主様曰く「アンプから出る音がやけに引っ込んだ音」)。実際にアンプにつないでみるとやけにハイ落ちしており音量も極端に小さくなっていました。今回のご依頼は「とりあえずちゃんと演奏できる状態にしてからしばらく弾いて今後の判断をしたい」ということでした。そのためネックについてはフレット交換といった比較的高コストな処置はせずに浮いたフレットの補修とすり合わせ、ナット溝の修正と電気部分の見直しを実施。ご依頼主様は当初ピックアップの性質がイマイチな出音の要因と考えていたそうで、ピックアップも含めて電気部分は交換、互換性のあるパーツは入手困難であることから新たに取り付けるパーツに合わせてピックガードも新調することを検討されていたのですが、幸いピックアップ本体は生きていたことと、新しいスイッチも元のねじ穴を生かした取り付けが可能だったことからオリジナルのピックガードをそのまま利用して仕上げさせていただきました。

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石ロゴ期 Fernandes フレットレスベースFJB-65Jジャコパスモデル

Fernandesのジャコパス風のフレットレスジャズベースをメンテナンス。

 上画像は基本調整や電気部品の総入れ替え再配線等でお預かりした石ロゴ期(1980年前後)のFernandesフレットレスジャズベースです。めったにお目にかかれない機種なのでご依頼主にお許しいただいて以下記事にさせていただきます。

 当時のカタログには「ジャコパス愛用のフレットレスベースをモデルに制作」と紹介されていた機種ですが、カタログ掲載の仕様と少し違っていて本機は21フレット仕様(フレットレスですが・・・)となっています。ネックポケットは通常の20フレットのものと同じようで、結果的にネック、ブリッジは少しヘッド側へ位置しており、それに伴って2つのピックアップは通常のジャズベースタイプよりもブリッジよりになっていました。通常の20フレット仕様とボディは共用でブリッジ位置のみ変更して21フレット仕様にしていたのでは・・・。フレットレスの場合、やはりメロディアスなフレージングをしたいところですが最高音がEまで出せる本機はかゆいところに手が届く感じです。

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ピエゾPU搭載ストラトの例

L.R.Baggsのピエゾ搭載シンクロトレモロに換装されたFender Deluxe Stratocaster。

上画像はL.R.Baggsのピエゾ搭載シンクロトレモロに換装されたFender Deluxe Stratocaster、音がイマイチとのことで再セットアップのご依頼をいただいたものです。持ち主様は本機を中古で購入されていますが購入時すでX-Bridgeに換装されており3wayのミニスイッチで「①マグネティックPU」「②マグネティックPU+ピエゾPU」「③ピエゾPU」と切り替え、マグネティックPUのボリューム、ピエゾのボリューム、マグネティックPUのトーン(ピエゾはトーンレス仕様)となっていました。とりあえずサウンドチェックしたところ、①の音がハイ落ちした痩せた感じの音であること(ベースでよく見るボリューム逆配線にされていました)、③の音はピエゾ的な音ではあるもののエレアコのようなサウンドとはだいぶ異なっていてトーンも効かずプリアンプも介さない音でもあり正直なところそのままでは使いにくい感じでした。②についてはピエゾ単体の音に比べてバランスが良くエレキのアンプのセッティングでも問題なく使えそうな感触でした。操作系もややこしくお世辞に使いやすいとは言えなかったと思います。

以上踏まえて以下のように電気パーツの変更・配線変更・再セットアップを実施。

①マグネティックPUのボリュームは通常の配線(本機搭載のPU Fender Vintage Noiselessに付属の配線案内の通り)に変更。②の配線と合わせることでピエゾon時にマグネティックPUのボリュームを絞るとピエゾの特徴が際立ち、絞り切るとピエゾの音も含めてミュートとなる。

②ピエゾ単体のモードは削除、ミニスイッチは2wayに変更。ピエゾのボリュームは逆配線にしてこのボリュームを0にしてもマグネティックPUは出力するようにする。

③トーンはピエゾmix時も効くマスタートーンに変更。

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パッシブ化・ハムキャンセルコイルをPU化したFernandes FAB-170

80年代初頭に製造されていたFernandes のアレンビック風アクティブベースFAB-170をパッシブベース化。

上画像は当店でパッシブ化をさせていただいたFernandes FAB-170です。1980年前後に流行したアレンビックに影響を受け国内の各社からも追随機種が発表されていたものの一つで勿論元々はアクティブサーキット、パライコの搭載、専用外部機器をつないで多彩な音づくりができるというかなり凝った機種ですが、経年劣化や故障のためか音がちゃんと出ない状態になってしまっていました。今回ご依頼主様により元のピックアップはそのまま生かしたパッシブベースへ換装しました。

見た通り3PU仕様です。パッシブ化にあたり元々ついていたアクティブサーキット基盤やロータリースイッチなどはすべて取り外し新しいPOT等で配線し直しました。パッシブ化にあたって使用しないミニスイッチやロータリースイッチの取り付け穴は画像の通りブラス製のローレットワッシャーとビスで塞ぎました。4つあるノブは3つのPUそれぞれのVolumeとMaster Tone、ミニスイッチはセンターPUのOn/Off。センターPUは当時のカタログにも「ハムキャンセル用PU」と紹介されていて、実際にそのままではごく小さな音量しか出ないPUですが、後述の追加パーツによって単体のPUとしても機能するようにしました。このPUの内部構造は不明ですが、おそらくはコイルの仕様はリアとフロントPUと共通、ごく弱いマグネットが入っているか、ひょっとしたらマグネットは入っていない(両隣のPUの磁界の影響でハムキャンセル信号を出力?)と思われます。
ハムキャンセル用のセンターPUを音を出力するための単体のPUとして機能させる目的で制作したパーツ。縞黒檀材に直径10mmのマグネットを仕込んだだけのもので 、
「外付けマグネットポールピース」とでも言えばわかりやすいでしょうか。希少な機種でもありボディにねじ穴などはあけたくないので今回は両面テープで貼り付けるだけにしてあります。
画像左は外付けマグネットポールピースをつけていない状態。このままではセンターPUは音量が小さすぎて使いようがないですが、フロントとリアの2PU仕様と考えればこの状態でも構わないと思います。画像右は外付けマグネットポールピースを貼り付けた状態。こうするとセンター単体でも十分な音が得られます。センターPUはミニスイッチでON/OFFできるようにしてあるので、例えばフロントまたはリアU
単体の音から素早く2PU Mixサウンドに切り替えたりできます。

外付けマグネットポールピースの有無でセンターの音がどうなるかの実験動画。元の状態では音量が極端に小さいのが十分な音になるのがわかります。

 オリジナルではアクティブサーキットでノイズが少なかったからなのか弦アースは配線されていませんでした。今回ブリッジ下のサステインブロックの底面にアースをつないで赤矢印の箇所からコントロールキャビティへ穴をあけアース線を配線。
 テールピースは3本のブラス製のビスでとめられていましたが腐食により脆くなっており真ん中の一本は折れてしまったので折れたビスの箇所はそのまま、残り2本は強度も稼げるステンレス製ビスに交換で対処。
左はパッシブ化したサーキット。ベースではオーソドックスな配線・パーツ構成になっています。右は元々収められていたオリジナルのサーキット。プリアンプ基盤にはオペアンプが3つのっています。二つあるミニスイッチやスタックPOTはパラメトリックEQのコントロールだったもの。基盤の左上のノブのついた物体は4wayのロータリースイッチです。このタイプのロータリースイッチがギター・ベースに使われているのは初めて見ましたが現行でもほぼ同仕様のスイッチが流通しています。小型なのでキャビティのスペースが限られたギター・ベースの改造用には良いかもしれません。オリジナルではこのスイッチによって「フロント」「ハムキャンセルのフロント」「ハムキャンセルのリア」「リア」を切り替えるようになっていたようです。弦アースを省略するくらい低ノイズだったのにハムキャンセルの音が必要だったのか、ハムキャンセル無しの音と差があったのか?ですが・・・何かほかの理由があったのでしょうか?知っている人がいらっしゃたら是非教えてください。

サウンドチェック。

 

さすがにアクティブで使用する前提のPUなのでパッシブで使う際のアンプの音量は結構大きめでちょうど良いくらいでした。元々スイッチが3つも付いていてパッシブ化にあたってそれを生かすことも考えてセンターPUのOn/Offスイッチを設置したのですが、さらに3wayのスイッチを増設して2PUのギターのように「リア」⇔「リア+フロント」⇔「フロント」の切り替えもできるようにしても面白いかもしれません。ベースではあまりこういったスイッチは付けずに各ボリュームで混ぜ具合を調整するスタイルが主流ですがギタリストがベースを使用する場合にはなじみやすい仕組みかと思います。