ピエゾPU搭載ストラトの例

L.R.Baggsのピエゾ搭載シンクロトレモロに換装されたFender Deluxe Stratocaster。

上画像はL.R.Baggsのピエゾ搭載シンクロトレモロに換装されたFender Deluxe Stratocaster、音がイマイチとのことで再セットアップのご依頼をいただいたものです。持ち主様は本機を中古で購入されていますが購入時すでX-Bridgeに換装されており3wayのミニスイッチで「①マグネティックPU」「②マグネティックPU+ピエゾPU」「③ピエゾPU」と切り替え、マグネティックPUのボリューム、ピエゾのボリューム、マグネティックPUのトーン(ピエゾはトーンレス仕様)となっていました。とりあえずサウンドチェックしたところ、①の音がハイ落ちした痩せた感じの音であること(ベースでよく見るボリューム逆配線にされていました)、③の音はピエゾ的な音ではあるもののエレアコのようなサウンドとはだいぶ異なっていてトーンも効かずプリアンプも介さない音でもあり正直なところそのままでは使いにくい感じでした。②についてはピエゾ単体の音に比べてバランスが良くエレキのアンプのセッティングでも問題なく使えそうな感触でした。操作系もややこしくお世辞に使いやすいとは言えなかったと思います。

以上踏まえて以下のように電気パーツの変更・配線変更・再セットアップを実施。

①マグネティックPUのボリュームは通常の配線(本機搭載のPU Fender Vintage Noiselessに付属の配線案内の通り)に変更。②の配線と合わせることでピエゾon時にマグネティックPUのボリュームを絞るとピエゾの特徴が際立ち、絞り切るとピエゾの音も含めてミュートとなる。

②ピエゾ単体のモードは削除、ミニスイッチは2wayに変更。ピエゾのボリュームは逆配線にしてこのボリュームを0にしてもマグネティックPUは出力するようにする。

③トーンはピエゾmix時も効くマスタートーンに変更。

以下詳細。

L.R.BaggsのX-bridge。各サドルにピエゾPUが内蔵されていてブリッジプレート裏側とブロック内部を経由してパラレルで出力される仕様。
コントロールはアルミのノブがピエゾのボリューム、通常のストラトノブはマグネティックPUのボリュームとマスタートーン、マグネティックPUのポジションセレクターとなる5wayスイッチ、ピエゾMixのOn/Offのミニスイッチ。ミニスイッチがレバースイッチやボリューム操作の妨げにならないようショーとレバータイプを選択。
配線のやり直しに伴って電気パーツはすべて新品に交換。ピエゾのボリュームが5MΩという非常に珍しい抵抗値のPOTだったので部品が手に入るか心配しましたがAlpha製のものがありました。ミニスイッチは2回路2接点タイプ(改造によく使われる6pin仕様)でピエゾのON/Offに加えてトーンの接続位置がマグネティックPUのみの時はボリュームの前(通常の位置)、ピエゾmix時はボリュームの後になるようにしています。

サウンドチェック。まずはクリーン。エフェクトなし、アンプはFender Vibro King。動画の冒頭一分間はマグネティックPUのみの音。以降はピエゾmix。配線変更前のチェックでピエゾ単体で鳴らすよりもピエゾとマグネティックのハーフトーンの方がアコースティックな雰囲気に近いことは確認していたので、今回はピエゾ単体での出力は捨てていますが、それによって操作もわかりやすくなっていて

 

次にクランチサウンド。「歪でピエゾ使う?」と突っ込まれそうですが意外に面白い音で楽しいです。動画の冒頭1分半はマグネティックPUのみの音で比較的なじみのあるストラトサウンド。以降ピエゾmixです。マグネティックPUの音主体にピエゾを少し混ぜたセッティングですが、ノーマルのサウンドよりもきらびやかなクランチサウンドになっています。また、通常クランチ程度の歪みではギター側のボリュームを絞るとクリーンに変化するというのがありますが、本機のピエゾmixの場合、歪みセッティングでボリュームを絞るとピエゾ風味が増しながらクリーンになってゆきます。歪はWEEHBO Effekte JTM Drive。

 

最後にファズでどうなるかをチェック。Fuzz Face系のファズでギター側のボリュームを絞ったクリーンはジミヘンをはじめ多くのギタリストに重宝されている音ですが、本機のピエゾmix時は先のクランチの時と同様、ボリュームを絞ることでピエゾ寄りのクリーンになってゆきます。動画の冒頭1分はピエゾoff、以降はピエゾonです。使用したファズはLovepedalの200lbs。

 

ピエゾピックアップと言えばエレアコで、エレキギターに搭載する場合は「アコースティックなクリーンサウンドを出す」ということに特化してしまいがちかと思いますが、配線の仕方によってはボリュームによる音色調整が効く歪ペダルとの組み合わせも面白いです。今回の場合、JTM Drive(クランチ)との組み合わせではピエゾの割合は小さめ、200lbs(ファズ)ではピエゾの割合大き目のセッティングが自分の好みでした。この辺りのセッティング・演奏中の操作は使う歪の種類や好みに音、操作性によって変わってくると思いますが基本的には「マグネティックPUボリュームを下げるとピエゾ風味が増す」「クランチ程度の歪ではピエゾを足す音で音の輪郭がよりはっきり煌びやかになる」というのがポイントになるかと思います。

ミニスイッチによる付加機能搭載では「スイッチ追加でサウンドバリエーションを増やす」「考えられる配線をなるべく多く網羅した操作系にする」という方向に考えがちかと思います。しかし、選択肢がたくさんあると必ず「実際の演奏では使わない音」も出てきますし、それを加えた操作系にすることによってかえって複雑で使いにくくなってしまうというリスクもあります。例えばよくあるストラトの改造で「ミニスイッチ追加でフロント+リアのハーフトーンを出せるようにする」というのがありますが、一般的に行われる配線の場合は「5wayスイッチのフロントあるいはリアがミニスイッチonでフロント+リアになる」です。しかし考えてみるとこの配線では目的にフロント+リアの音にたどり着くためにミニスイッチと5wayスイッチの切り替えという2段階の操作になりやすく、意外と操作に煩雑さを覚えます。実は使用するミニスイッチの種類によってはミニスイッチのみの1アクションで(5wayスイッチがどのポジションにあっても)強制的にフロント+リアの音に切り替えられる配線方法もあります。Heavy Gauge Guitarsではこうしたミニスイッチによるサウンドバリエーション付加の改造もいろいろ研究しております。ご自身のギターにミニスイッチやプッシュプルスイッチでのサウンド切り替え付加をご検討されている方、ご興味のある方、遠慮なくご相談ください。

 

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