フレット交換させていただいたFender Vintage Series 57 Stratocaster Made In Fullerton(1982~84年製)

珍しいFullerton工場時代のFender Vintage Series 57 Stratocaster.

 画像はフレット交換のご依頼でお預かりしていたFender Stratocasterです。ご依頼主様によれば「結構古いAmerican Vintageの57ストラト」ということだったのですが、見慣れているAmerican Vintage 57 Stratocasterのそれと少し異なること、配線材がFenderのヴィンテージ仕様復刻モデルで見慣れているClothwireでなくビニール被覆線で特にPUのケーブルについては同時期に製造されていたBulletなどで見られた線と同様のものであること、コンデンサがオレンジドロップであること、ネックに手書きされている製造日が判読できなかったもののPOTは1982年製のものだったことから、断定はできないもののFullerton工場で82年から84年にかけて製造されていたヴィンテージ復刻モデルだと推定しました。当時、それまで単なる「Stratocatser」として仕様変更を重ねてきた3点止めネックのストラトは本機の登場を契機に生産終了し、その後のストラトは本機と同じく4点が標準仕様となったことや、以降のヴィンテージ復刻モデルの継続製造などFender Stratocasterの歴史の中で大きな転換点となった機種だと思われます。今回ご依頼主様のご許可を頂いてレポートを掲載させていただくことになりました。ご興味ある方は以下もご覧いただければ幸いです。

 製造から40年以上経過していて、本国アメリカでは準ヴィンテージのような扱いになっているそうです。今回の個体についてはかなりの汚れや経年劣化があり、最初に拝見したときに「(本物の)57年製?」と聞いてしまいました。ご依頼主様によれば保管環境や手入れが良くなかったということでしたが、結果的にかなり貫禄のある外観になっています。
 錆ついたブリッジサドル。弦高調整のイモネジは1弦サドルを除いて交換されています。ピックガードのビスも結構な錆。通常であれば錆たビス類は折れてしまうリスクなどを鑑みて交換をお勧めしますが、今回はボディ内部側の錆びは軽度だったことと、新しいビスにしてしまうと外観と合わないと考えあえてそのままに。ブリッジ回りの塗膜に激しくクラックが入っています。PUの高さ調整が効かなかったので 内部のゴムチューブは新しいものに交換させていただきました。
 ピックアップのケーブルはビニール被覆線で、最初は交換されたものかとも思ったのですが、ほかのケーブルもビニール被覆。はんだ付けをやり直したようにも見えないのでおそらくはオリジナルのパーツと推察しています。PUのケーブルは当時のFenderの他機種で同様の風合いのものもあったようです。POTについてはその刻印から1982年製であることが確認できます。コンデンサーはポリエスルフィルムのオレンジドロップ。Fenderでオレンジドロップというのは意外な気がします。スイッチはFenderではおなじみのCRLですが、このブランド最近かなり高額になってしまって交換パーツの選択肢に上がらなくなってきています。このスイッチもオリジナルのままだと思いますが、製造から40年を経て健在。
 ボディバック。トップ側同様塗装に激しくクラックが入っています。バックパネルが取り付けられていたのですが、そのビスは木部側までがっつり錆びていてそのままではリスクが高いので外したままに。パネルをつけたい場合はステンレス製のビスに変えることをお勧めしました。
 今回Heavy Gauge Guitarsでメンテナンスさせていただいた部分はフレットとナットの交換。フレットはジャンボフレットに打ち換え、ナットはCamel Boneから削り出して制作・取付。フレット交換に伴って古い塗装は剥がし指板修正(ネックが逆反り状態でトラスロッドでの補正も厳しい状態だったのでその修正も兼ねた指板修正)の上で新しいフレットを打ち、それから塗装をしています。塗装はフレンチポリッシュによる脂止め・下塗りの上でラッカートップコートですが、外観を周りに合わせるためにあえてムラのある感じに仕上げています。また、塗膜表面はマット仕上げ。これは弾き込むことで指先の触れる部分とそうでない部分に艶の出方に差が出てより使い込まれた雰囲気がでることを狙っての処置です。
 ヘッド。デカールが大分荒れてしまっていることや付着した汚れと塗装のクラック、ストリングリテイナーの錆びが長い年月を感じさせます。3,4弦用のリテイナーは後から追加されたものでしょう。今回の調整で1,2弦のリテイナーにスペーサーを追加。

 正直なところ正式な製品名はわからかったので本記事ではとりあえず「Vintage Series 57 Stratocaster」としていますが、お店によっては「最初期のAmerican Vintage Series!」という紹介もありますし、Fenderのウェブサイトでは「US Vintage Series」と説明されていたりします。いずれにせよ現在まで続くFender社のヴィンテージ仕様を復刻した最初のギターという認識で良いかと思います。近い将来ヴィンテージギターとして扱われるようになるであろうストラト、なかなかの一品でした。

サウンドチェック。

クリーン。アンプはFender Vibro king、エフェクトなし。フレット交換をしたとはいっても鳴り方は弾き込まれてきたギターの感触満載です。

 

クランチ。歪はWEEHBO Effekte JTM Drive。

 

先のクランチをXotic BB Preampでゲインブースト。後で気づいたのですが普段センターにセットしているBB PreampのBassツマミが上がっていました。そのためか低域が強く出ていますが、実際に弾いている時は気持ちよかったのでそのままでOKにしました。

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