Ibanez RGのロック式トレモロ固定とダウンチューニング調整の例

 上画像は全弦1音下げの上で6弦をさらに1音下げたドロップCチューニング専用に調整させていただいた日本製Ibanez PrestigeシリーズのRGです。持ち主様にご許可をいただきダウンチューニングへのセットアップ例として以下レポートします。

 本機に搭載のロック式トレモロは激しいアームダウン、アップができるものですが、今回はアームは使わないということと「全弦1音下げ」と「ドロップC」を併用したいとのことでトレモロはベタづけ固定にする処置も行いました。

 1音下げ以上のダウンチューニングで一番重要なのは「ノーマルチューニングのときよりも太い弦にする」というところです。半音下げ程度なら通常のセットでも全く問題はありませんが1音下げともなると09や10のセットでは弦振動は不安定になりますし、押弦した際の音程もシャープしがちになります。今回はご依頼主様と相談の上でDaddarioの11-52のセットを選択。6弦52と聞くと、通常の10-46や09-42に慣れている人からすると「太すぎないか」と心配されそうですが、実はこの弦でもDropCチューニングでは6弦を3音~3音半くらいのチョーキングができてしまうくらいの緩さになります。今回の場合は全弦1音下げで使用することも想定しているので11-52で良い選択だったかと思いますが、ドロップC専用にする場合は低音弦はもう一段階太いセットでも良いでしょう。DaddarioやErnieBallなどからこうしたダウンチューニング用のセットは多種発売されていて、Daddarioには11-56というドンピシャのセットもあります。

 弦を太くする以上はナットの溝の調整が必要になる可能性が高くなります。今回のロックナットではそれは不要でしたが、一般的な牛骨ナットなどで太い弦にする場合、とくに低音弦側はナット溝の修正が必要と考えておくのが無難です。

以下、今回のメンテナンスの詳細。

 もともとオリジナルのハムバッキングPU×2に5wayスイッチ、マスタボリュームにマスタートーンというコントロールでしたが今回の調整に際してPUはDimazio(フロント:Humbucker From Hell、リア:Tone Zone、いずれも持ち主様による持ち込み品)に交換。合わせて他の電気パーツも新調、スイッチは2ハムでは最もベーシックな3wayに、ボリュームは国産部品からOAK、CTSへそれぞれ交換。ご依頼主様はトーンを使わないということでトーン回路はカットしました。シリンダータイプのジャックも新品へ交換しています。
 コントロール部のザクリ内部。ボリュームやスイッチは新調していますが、トーン回路はつないでおらず、ダミーでオリジナルのPOTをそのままにしてあります。ボリュームについているコンデンサーはハイパス用でOrange Drop715Pの0.001μFです。今回シンプルな配線に改めておりますが、後からコイルタップを追加したり、必要に応じてトーン回路を復活させても良いかと思います。追加パネルの裏面は元々シールド処理はされていたのですが使用したシールド材が酸化のためか通電しない箇所が複数出ていたので改めてシールドを貼り直しました。
 本機はロック式トレモロ搭載なおかつボディ側が大きなアームアップに対応した深いザクリになっていますが、持ち主様はアームを使用しないスタイルとのことでべた付けセッティング(トレモロ固定またはアームアップができないセッティング)できるように専用のスペーサーをローズウッドから削り出しで作成、トレモロブロックとボディの間に仕込みました。画像ではわかりにくいですが、ブロック側のスプリング端の下に見えている茶色の部分がそれです。 さらに元々3本掛けだったスプリングは2本追加(青っぽいメッキのスプリンが今回追加したもの)。これらの処置によって実質的なトレモロべた付け状態にセットアップできました。
 もともとアームを使っていなかったようで当店持ち込み時にすでにロックナットは取り外されていました。弦は1弦から11,14,18,30,42,52、チューニングは1弦から5弦まで1音下げ、6弦は2音下げ。場合によっては6弦を1音上げたセッティングでも使用したいという希望があったのでネックの反り具合は両方のセッティングで不都合のない中間的な状態に調整ています。チュー二ングを変えると結構ネックの反り具合にも影響はあるので、今回のような場合は「ドロップC時にネックがほんのわずかに順反りなおかつ弦高が低くなりすぎないこと」という点に注意しています。
 今回のナットについては調整は不要でそのまま太い弦を張っていますが、ロックナットでない通常の牛骨ナットなどでは弦を太くするにあたってナット溝の修正も必要になります。

サウンドチェック。まずはクリーン。アンプはFender Vibro Kingでエフェクトなし。

 

クランチ。歪はWEEHBO Effekte JTM Drive。

 

先のクランチをXotic BB Preampでゲインブースト。

 

 ドロップチュー二ングの場合6弦のチュー二ングを大きく下げるために通常の弦だと緩くなり過ぎてバランスが悪くなりやすいです。次の動画は当店で09-42のセットでノーマルチューニングでセットアップしたストラトでドロップDチュー二ングでサウンドチェックした時のもの。6弦の音をバランスよく出すのに苦労している様子が見て取れると思います。

 

 同じストラトでノーマルチュー二ングだと6弦も問題ないです。6弦のチューニングが違うだけで他すべて同じですが、張力の違いによりドロップDの時よりもネックは順反り方向に動いているので全弦の弦高も若干上がっており、結果的に6弦以外の音も少し変わっています。この例の場合、依頼内容はノーマルチューニングでセットアップで、なんとなくドロップDにしてチェックしたら上の動画のような感じだったので問題はないのですが、仮にドロップDでのセットアップの依頼だった場合は弦は09-46をお勧めしていたかも。

 

以上、ダウンチューニング、ドロップチューニングにする際の御参考にしていただければ幸いです。

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