Fender Jaguar 改造例: 3PU化/プリセットロー・ハイカット配線/他

Fender Jaguarの3PU化、プリセットコントロールをプリセットLow/ High Cutへ変更する改造をやらせていただきました。

上の画像は当店で改造させていただいたFender Japan JG66 JAGUARです。JAGUARはもちろんJazzmasterタイプにも採用できる改造例として紹介いたします。

主なポイントは以下の通り。

①センターPUを増設、3PU仕様に。それぞれのPUのOn/Offスイッチは下側のプレートに配置。

②プリセットコントロールはフロントPUのみではなくすべてのポジションに効くプリセットローカット・ハイカットコントロールに変更、ハイカットとローカットを自由に組み合わせたサウンドをスイッチ切り替えで呼び出せるようにする。

③JaguarやJazzmasterの欠点を軽減するための調整。

3PU化によって守備範囲はかなり広くなりました。Low CutとHigh Cutを自由に組み合わせて1アクションで呼び出せる新しいプリセットコントロールも使い手のある装備になったと思います。

サウンドチェック。最初にクリーン。アンプはFender Vibro King。

 

クランチサウンド。歪はWEEHBO Effekte JTM Drive.

 

先のクランチをXotic BB Preampでゲインブースト。

 

以下詳細。

 

PU増設前。
他の外観は変わりませんが、PUが一個増えただけでなかなか個性的な見た目になりました。PUはFender JapanオリジナルからFender USAのAmerican Vintage 62 JAGUAR のPUに交換。PU増設のために木部とピックガードの切削加工を行っています。
それぞれのPUのOn/Offに対応するスライドスイッチが3つPUの同じ順に並んでいます。 元々は左から「ローカットOn/Off」「リアPU On/Off」「フロントPU On/Off」だったのを「リアPU On/Off」「センターPU On/Off」「フロントPU On/Off」に変更 (画像の状態だとフロントPUがOn)。ストラトなどのレバースイッチに慣れていると戸惑う仕様かもしれませんが例えば任意の二つ以上のPUをONにする操作などは慣れれば1アクションで可能ですし、どのPUがOnになっているかも視覚的にわかりやすいのがこの仕様のポイント。ノーマルストラトでは選択できないフロントとリアのハーフトーンや3つすべて鳴らすハーフトーンなども迷わず出せるのは大きなメリットです。
オリジナルではフロントPUのジャズトーン(高域を控えめにした甘いサウンド)を呼び出すものだったプリセットコントロールは大幅に機能を変更、フロントPUだけでなくすべてのPUに効く、任意で調節できるローカットとハイカットを装備しました。 コントロールの割り振りはプレート左からハイカット量を調節するホイール、ローカット量を調節するホイール、プリセットコントロールのOn/Offスイッチです。ホイールの並び順は今回の改造のご依頼主様の指定ですが、好みで逆にしてもかまわないでしょう。今回は両ホイールは直感的に操作できるようにブリッジ側(赤矢印方向)に回すことで硬い音(トレブリーな音、シャープな音)、反対側に回すと太い音(マイルドな音、こもった音)になるようにしました。ホイールの止めネジは気に入ったポイントの目印にできるようにシルバーのものに交換、ブラインドでもわかるようにほんの少しだけホイールから頭を出して固定される長さを選択。Jaguar、Jazzmasterのプリセットコントールのホイールは目盛りもないですし、簡単に動いてしまうのでその対策としてあらかじめ気に入ったポイントで止めネジが中央に来るようにホイールを取りつけておくのは有効かと思います。
プリセット部のセッティング例①ハイカットはホイールをブリッジ側に回し切り(ハイカット量0)、ローカットはホイールの留めネジが中央に来るように調整するとオリジナルと同様のローカットをスイッチ操作でOn/Offできます。今回の回路ではオリジナルよりも少し多めにローカットできるようにしており、さらにホイールをブリッジ側に回せばもっとローをカットできます。
プリセット部のセッティング例②:ハイカットは止ネジが中央に来る位置、ローカットはヘッド側に回し切った状態でオリジナルのJaguarやJazzmasterでのプリセットサウンドに近いマイルドな音になります。ハイカットの効き幅はマスター側のトーンが控えめに効く仕様で、プリセット側はそれより大きく効くようにしてあります。一般的にハイカットトーンはノブを回してゆくとある時点で急激にモコモコになるポイントがあり、微調整が難しい場合がありますが、今回の仕様では控えめに効くマスター側のトーンを微調整用として併用することでより好みのハイカットサウンドを作りやすいと思います。
プリセット部のセッティング例③:ローカットとハイカットを両方適量効かせたセッティング。 ハイカット/ローカットコントロールはどちらか一方だけ利かせるのも良いのですが両方を適量効かせた音も面白いものがあります。プリセットOffでトレブリーでパンチの効いた音でソロをとり、コードを柔らかく聴かせる場面でプリセットサウンドに切り替えるといった使い方が想定できます。 「アンプやエフェクターじゃないんだからハイカットとローカットを同時に効かせるなんてやりすぎでは・・・」と心配になる方もいらっしゃるかもしれませんがうまく使えば楽器の守備範囲は広がります。実例としてリアPU一発のESQUIREではネックポジションの「プリセットハイカットサウンド」では実はローカットもして音色を調整してあります。単純にハイカットだけしただけではイマイチでもちょっとローをカットすると輪郭もしっかり出つつマイルドで魅力的な音になったりします。ローカットもハイカットも音声信号をある程度削るものなのでカット量を多くするほど音量も小さくなってきます。そこも使い分けのポイントになりそうです。

セッティング例①(ハイカット)のサウンドチェック。PUはフロントに固定。

セッティング例②(ローカット)のサウンドチェック。

セッティング例③(ローカットとハイカットを両方効かせる場合)のサウンドチェック。

元々は国産パーツで配線されていましたが今回の改造時にCTS POT、Orange Drop、Switchcraft Jackへアップグレード。USAのヴィンテージモデルと同じクロスワイヤーで配線しなおしました。
ここからはJaguarの短所の軽減のために行った調整。オリジナルではブリッジのオクターブ調整のビスの先端がサドルからネック方向への飛び出しているのが普通ですがセッティングや弾き方によってはビス先端が弦に干渉するトラブルが起こりやすいのでオクターブ調整後のサドルの位置に応じてサドルから先端が出すぎない長さのビスに交換。
弦がブリッジを押さえつける力を稼ぐためにネックポケットに本機用に制作した木製シムを挟みました。これによってオリジナルの状態よりもサドル頂点の弦の折れ曲がり角度が大きくなっています。Jaguarは弦がブリッジ部を抑える力が弱いことによるサステイン不足や5,6弦の弦落ちが悩みどころですがネックシムを使う事で軽減できます。

以上が今回行った改造・調整です。JaguarやJazzmasterは近年人気が高まっていますがプリセットコントロール部やブリッジ回りに不満を持つ方は多いと思います。プリセットコントロールは元々がジャズギタリストを狙ったフロントPUのマイルドなサウンドを狙ったもので現行のリィシュー機種もほぼ同じサーキットになっていますが、現代のギタリストにはなかなか使いどころのない機能なのか「プリセットコントロールは使わない」という声はよく聞きますし、モダンな機種ではそもそもプリセットコントロールを廃していたりします。しかし、外観を変えずに部品の選択、組み合わせ、配線を変えることによって意外と使い勝手の良い機能に変えられる可能性もあります。

今回の3PU化はJaguarに限らず2PUのギターではよく行われる改造で、今回のようにストレートにPUを増設している例もよく見かけます。一方で「2PUの見た目は変えたくないけど3PUのサウンドバリエーションはほしい」という人もいらっしゃることでしょう。そういった場合は「ステルスPU」というやり方があります。「表からは見えないPU」をピックガード下に仕込むというもので、弦とPUとの距離が離れることによる制限はありますが、守備範囲は確実に広がります。

当店でJazzmasterにステルスPUを施工した例

ブリッジ回りについては構造上仕方ない面もありますし、そういう個性でもあるのでなんでも改造すればよいというものではありません。が、弱点軽減を狙ったアレンジで「元の状態に戻せる調整」ならどんどん試してみても良いと思います。今回のネックシムやオクターブ調整ビス交換などはそれにあたります。当店の場合は他にブリッジ高さを調整するイモネジのぐらつきをロックするというアレンジも行うことがあります(下画像参照)。これらはしばらく弾いてみて元の状態の方が好みであったなら戻しても良いでしょう。

Jauguar、Jazzmaster、Mustangではブリッジの高さ調整はブリッジプレート両端の穴(黄矢印)からレンチを突っ込んでその先にあるイモネジ(赤矢印)を回して行いますが、こういったネジはオスとメスの間に若干の遊びがあるものなので当然ですが多少のぐらつきがあり当然ながら振動の伝達ロスも生じていると考えられます。このぐらつきを抑えれば振動の伝達ロスを軽減を期待できます。
方法はいたってシンプル。ブリッジの高さを決定してからもう一個同じピッチのイモネジを入れて締めることで全くぐらつきがない状態に固定できます。ただし、シンプルとはいってもそのままでロック用のイモネジが入るわけではなく穴の加工が必要な場合がほとんどです。またロック用の追加ネジも一般的な窪み先ではなく平が適していますが、インチ規格の場合は平のイモネジは入手困難なので既存のものを加工するなどで対処します。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です