「修理・調整例/リぺア・メンテナンス例」カテゴリーアーカイブ

低価格エレキベースのフレットメンテナンス例

こちらのSQUIRE Precision Bassのフレット周りのメンテナンスを行いました。

こちらのプレシジョンベースはFenderのジュニアブランドSquireのもので新品の実売価は3~4万円くらいの価格帯です。このくらいの価格帯になるとメーカーも製造コストがかなり厳しく制限を受けるためか基本的な調整が半端な状態で売られていることが多いと思います。本機の場合、2004年製で製造からの経年変化も加わっているとは思いますが、新品でも本機の元の状態と同様なネック回り・フレット周りであることは珍しくなく、それが原因で初心者さんの練習モチベーションが左右されてしまったりもあると思います。低価格品であってもメンテナンスを加えることで弾き心地は激変し、初心者さんの最初の一本として長く付き合って行ける楽器になり得ます。以下、今回行ったフレット周りのメンテナンスのBefore/Afterを紹介します。

Before:フレット表面は曇り、指板は脂分が抜けて色が薄くなっています。減りはそれほど多くはなく、目立つ凹みもありませんが・・・
Before:横から見たところ。遠目にはわかりにくいですが、実はフレットの端の鋭くなっている部分がちょっこっとはみ出ている部分が多数あり、左手のポジションチェンジで引っ掛かりが多発する状態。そのままでは下手をすると怪我をすることも。そして、画像下段左のフレットは少し浮いています。こうしたフレット浮も何か所かありました。
本機に打たれているフレットはこの画像のフレットのように指板端の足をカットして打ち込まれています(赤矢印の箇所)。つまり前の画像でフレットが浮いてる部分の下は完全に「隙間」ができてしまっている状態。こうなるとかなり切っ先が鋭く演奏にも支障が出やすいです。

今回のベースの場合、まずフレット浮きの修正を行いました。具体的にはまず浮いたフレットを改めて指板に叩き込む作業を実施。叩いて修正した後しばらくすると再び浮き上がってしまうこともあるので、しばらく時間をおいてから再度チェック、若干ですが再び浮き上がっている箇所があり、そういったところは接着剤を注入して再固定を図っています。「フレットを接着する」というのではなく「フレットが打ち込まれている溝の隙間を埋める」という目的です。フレットに接着剤を使うというのはなじみがない方も多いと思いますが、実はメーカーで制作されている高価格帯のギターでもフレットを打ちこむ際に接着剤を併用している例はたくさんあります。そうしてフレットをしっかり固定した状態でフレットの高さに若干ばらつきがあったので擦り合わせ(フレットを削って高さを揃える作業)を実施。といっても高さの差はわずかでもともと目立つ凹みもなかったフレットなので擦り合わせで削った量はわずかです(0.05mm未満)。そしてフレット両端の鋭い部分を削り落とし(丸め加工)を加え左手移動時の引っ掛かりを解消、最後に脂分が抜けた指板のオイルケアをして完了。ローズウッドやエボニーは脂分が多い材なので、オイルケアも結構大事です。

以下Afterの状態をご覧ください。

After:メンテナンスが完了した指板&フレット。フレットはピカピカにした方が音もしっかり発音させやすく、伸びも得やすくなります。当然演奏性も向上します。指板の色合いがBeforeよりもかなり濃くなっていますが、それだけ元の状態では脂分が抜けてカサカサになっていたという事です。
After:フレット端。Beforeの状態に比べてかなり丸くなっているのがわかります。これにより引っ掛かかりは解消、弾き心地がかなり向上しています。

今回のメンテナンス例は「新品売価3~4万くらいの低価格機で足りない部分を補って質を大きく向上させる」という例です。メンテナンスの内容としては高級な楽器でも行うもので、買ったばかりの楽器でも「なんか弾きにくい」「なんか音がヘン」といった場合に今回同様の基本的なメンテナンスで化けてくれることはよくあります。お手持ちの楽器でお心当たりがあれば是非ご相談ください。

フレット交換に伴う指板修正の例/指板修正でネック反り補正

フレット交換・指板修正のためフレットを抜いた状態のジャズベースタイプネック2本。上は2014年製Fender Japan JB62のネック、下は1977年製のGreco JB450Sのネック。

フレットを交換する際には「指板表面を薄く削って平滑な面に整える作業」が伴いますが、当店ではこれを「指板修正」と呼んでいます。この作業の主な目的は以下の①ですが、ネックの状態によって②も加わります。また場合によって②のためにあえて摩耗していないフレットを交換するという選択肢もあります。

①指板表面の凹凸を解消して平滑な面に修正、弾きやすさを向上させる。また新しいフレットを打った際のばらつきを極力減らし、フレット擦り合わせでフレットを削る量・フレットごとの削る量の差をできるだけ少なくする。

②ネックの順反りの補正、ハイ起きの補正。

①だけが目的の場合は指板のローポジションからハイポジションまで一様にごく薄く切削、研磨しますが、②も伴う場合はネックのローポジション側またはハイポジション側、あるいはその両方をミドルポジションよりも多めに削ることになります。つまり、指板を削ることで曲がってしまったネックの直線性を作り直します。当然ながらいくらでも削ってよいわけではなく、状況に応じて少し削るといった感じです。今回の例の2本のジャズベースのネックはいずれも②も目的に加えて指板修正を行いました。 続きを読む フレット交換に伴う指板修正の例/指板修正でネック反り補正

ST Type コンポーネント制作

既成パーツで組み上げさせていただいたST Type。

お客様のご依頼でコンポ―ネント制作したST Typeです。パーツは基本的にお客様がお好みのものを持ち込んで、当店ではそれらを必要に応じて微修正を加えたうえで組み上げ、調整を行わせていただきました。

今回はUSA製のボディとネック(それぞれ別ブランド)、Fender純正のトレモロ、PU、現行クルーソンペグ等をお客様が持ち込まれ、それらを元にスタンダードなストラトキャスターとなるように仕上げさせていただきました。

サウンドチェック。アンプはFender Vibro King。最初にWEEHBO Effkte JTM Driveで歪ませたクランチ。

先のクランチをXotic BB Preampでゲインブースト。

最後にクリーン。シールドケーブルはBold Cable FATでアンプ直。

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1984年製 Ibnaez AR-300 レストア Before/After

IbanezのArtist Series、1984年製のAR-300のレストア(しばらく放置されていたものを使える状態に復帰)させていただきました。画像左が作業前、右が作業後です。今回はピカピカに再生するのではなく、古さを残しつつ演奏性を回復させるのと、違和感のある破損個所を補修するという方向性です。幸い電気系統は現役で使える状態でしたが、フレット周りの劣化が顕著で、ヘッドエッジ欠けなどがありました。以下レストア作業の詳細。

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ミニテレキャスターのカスタマイズ/廉価ミニギター徹底調整

廉価ミニギターを徹底調整、さらにサウンドバリエーションを広げる改造を追加。

大手楽器店の企画商品のミニテレキャスターをちゃんと演奏に耐えるように徹底的に調整を施し、さらにサウンドバリエーションを増やすカスタマイズを追加しました。ミニギターの調整、激安ギターの調整、テレキャスタータイプの改造例として以下紹介いたします。

真ん中のテレキャスが通常にサイズ。スケールは648mm。右側が今回のミニテレでスケールは570mm。左隣は以前徹底的に調整を加えた335風のミニギター。

今回のテレキャスの弦長は570mm。国内で販売されているミニギターでは最もよくみられるスケールです。テレキャスの通常スケールは648mm(約25.5inch)なので、13%ほどダウンサイジングされておりかわいらしい外観です。PUやブリッジ、コントロールプレートは通常サイズのものが流用されているので、これらの交換は比較的容易。ちなみに以前当店で徹底的に調整を加えたES-335風のミニギターはスケールは520mmでした。

元々は新品実売価1万円台という超激安品なので致し方ないのですが、新品時の状態には以下のような問題がありました。

①ペグポストの高さがミニギターとしては高すぎ、特に3,4弦で弦とナットの角度が緩く弦がナットを抑える力が緩く、サステインが極端に短い上、開放弦のビリツキがひどい

②ナット溝が深すぎ、広すぎで弦の振動がヘッド側に逃げまくっていた。また、これにより開放弦のビリツキも発生。これもサステイン不足の要因。

③フレット高さにばらつきがあり音づまりするポジションもある。浮いているフレットもあった。

④フレット上面の仕上げ荒く弦が触れる面が全体的にざらざら。ビブラートやチョーキングがやりにくい。フレットサイドが指板側面からはみ出ている箇所多数(いわゆるバリが出ている状態)、ポジション移動時にひっかかる。

⑤スケールが短いため、一般的な弦だと弦がサドルを抑える力が緩め。今回やや太めの11~52の弦を張ってみたが、そのままではまだサステインが短い感じがした。

⑥オクターブずれ。3wayサドルのノーマルのテレキャスターでは普通に見られる欠点であるが、スケールが短い本機はより顕著。

以下、調整と改造の詳細。

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