「修理・調整例/リぺア・メンテナンス例」カテゴリーアーカイブ

1984年製 Ibnaez AR-300 レストア Before/After

IbanezのArtist Series、1984年製のAR-300のレストア(しばらく放置されていたものを使える状態に復帰)させていただきました。画像左が作業前、右が作業後です。今回はピカピカに再生するのではなく、古さを残しつつ演奏性を回復させるのと、違和感のある破損個所を補修するという方向性です。幸い電気系統は現役で使える状態でしたが、フレット周りの劣化が顕著で、ヘッドエッジ欠けなどがありました。以下レストア作業の詳細。

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ミニテレキャスターのカスタマイズ/廉価ミニギター徹底調整

廉価ミニギターを徹底調整、さらにサウンドバリエーションを広げる改造を追加。

大手楽器店の企画商品のミニテレキャスターをちゃんと演奏に耐えるように徹底的に調整を施し、さらにサウンドバリエーションを増やすカスタマイズを追加しました。ミニギターの調整、激安ギターの調整、テレキャスタータイプの改造例として以下紹介いたします。

真ん中のテレキャスが通常にサイズ。スケールは648mm。右側が今回のミニテレでスケールは570mm。左隣は以前徹底的に調整を加えた335風のミニギター。

今回のテレキャスの弦長は570mm。国内で販売されているミニギターでは最もよくみられるスケールです。テレキャスの通常スケールは648mm(約25.5inch)なので、13%ほどダウンサイジングされておりかわいらしい外観です。PUやブリッジ、コントロールプレートは通常サイズのものが流用されているので、これらの交換は比較的容易。ちなみに以前当店で徹底的に調整を加えたES-335風のミニギターはスケールは520mmでした。

元々は新品実売価1万円台という超激安品なので致し方ないのですが、新品時の状態には以下のような問題がありました。

①ペグポストの高さがミニギターとしては高すぎ、特に3,4弦で弦とナットの角度が緩く弦がナットを抑える力が緩く、サステインが極端に短い上、開放弦のビリツキがひどい

②ナット溝が深すぎ、広すぎで弦の振動がヘッド側に逃げまくっていた。また、これにより開放弦のビリツキも発生。これもサステイン不足の要因。

③フレット高さにばらつきがあり音づまりするポジションもある。浮いているフレットもあった。

④フレット上面の仕上げ荒く弦が触れる面が全体的にざらざら。ビブラートやチョーキングがやりにくい。フレットサイドが指板側面からはみ出ている箇所多数(いわゆるバリが出ている状態)、ポジション移動時にひっかかる。

⑤スケールが短いため、一般的な弦だと弦がサドルを抑える力が緩め。今回やや太めの11~52の弦を張ってみたが、そのままではまだサステインが短い感じがした。

⑥オクターブずれ。3wayサドルのノーマルのテレキャスターでは普通に見られる欠点であるが、スケールが短い本機はより顕著。

以下、調整と改造の詳細。

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フレット擦り合わせ Before After ①

ローズウッド指板、ヴィンテージスタイルの細目のフレットのストラトキャスタータイプ(中古品として当店で買い取ったFender Japan ST62)のフレット擦り合わせの例、Before Afterです。

Before:フレット擦り合わせ実施前の状態

フレット擦り合わせする前の状態は以下の写真の通り。

ネック全体。指板の色がAfterに比べて薄いのは脂分が抜けているため。

ネック全体の写真だと個々のフレットの状態はわかりませんが、Afterの写真と比べていただくとフレットの「輝き」がかなり違うことに気づきます。フレット擦り合わせ前のフレット表面は「曇り」があります。この曇りはビブラートやチョーキング時の摩擦を大きくするため、フレット摩耗を加速する原因になります。また、指板全体を見るとローズウッドの色むらが結構あります。これは脂分が抜けた部分の色が薄くなっているためです。

ローポジション。他ポジションに比べて顕著に凹みができています。
1フレット付近。ピントがなかなか合わせにくく少し淡い画像になっていてわかりにくいのですが、実際はこの画像で見るよりも凹みはもっと激しく見えました。はっきりと凹みが確認できますが、実はこれくらいの状態でも凹みの深さは0.05mm弱くらいだと思います。
ミドルポジション(5~10フレット付近)。中央(8フレット)にピントを合わせています。よく見るとプレーン弦の部分ではわずかに凹みができてきているのがわかります。フレットがちゃんと固定されている場合はこれくらいならまだあまり問題にはならない程度の摩耗だと思います。
ハイポジション(11フレットより上のポジション)。画像では分からないかもしれませんが、ほんのわずか緩やかな凹みがプレーン弦側にみられます。ミドルポジションよりは軽症。この程度だと目視でも見落としてしまう事が多いのでは。

フレットの減りはポジション側の方が多く、特に1~3フレットのプレーン弦は顕著に凹みができていました。1,2弦は15フレットくらまでわずかに緩やかな凹みができていました。フレットの高さは一番高いところで約1.1mm、低いところで約1.05mmでした。ローポジションのフレットの凹みの深さは計測が難しいのですが、経験的に0.05mm弱程度と思われます。

ちなみに本機を買い取った時点での演奏性ですが1弦12フレット1.5mm、6弦は2.0mmくらいのセッティングだとプレーン弦1、2フレットで音づまりが出ていました。ネックの調整で音づまりまで至らないビリツキ程度に抑える事も可能かと考えられましたが、他ポジションとの音の違いは避けられませんでした。ミドルポジション以上はHeavy Gauge Guitars店主の弾き方の場合、ピッキングの仕方によってはちょっとビリツキが気になりましたが、演奏上は我慢できる程度でしたが、今回はローポジションの摩耗は見過ごせない状態だったので擦り合わせ実施。

もちろんできればここまで凹みが進行する前にフレット擦り合わせを行った方が良いと思いますが、当店に修理依頼されるフレット擦り合わせのネックでもっと激しく凹んでいる例も珍しくありません。今回の例の場合はまだ軽症の部類かもしれません。

After:フレット擦り合わせ後の状態

フレット擦り合わせ後の指板全体の状態。

Beforeと比べてフレット表面に輝きが出ているのがわかります(実際は画像よりももっとピカピカ)。また、指板はクリーニングの上、専用のオイルでコンディショニングしています。Beforeの状態よりも色が濃く、ムラも少なくなっています。

ローポジション。もともと凹みが一番大きかったポジションなのもあって、フレット擦り合わせで削った量はこのあたりが一番多いですが、それでもフレット高さはまだ十分あると思います。
1フレット付近。Beforeで見られた顕著な凹みは消失。この状態でフレットの高さは1.0mmよりほんの少し高いくらい。
ミドルポジション。写真だと輝き具合がうまく再現できなかったのですが、実際はもっとピカピカです。
ハイポジション。

擦り合わせの目的はフレットの凹凸をなくし、高さをそろえることですが、だからと言って全部のポジションを均一に削るというわけではなく、状態によって多めに削るところとそうでないところがあります。今回の場合、ローポジション側は顕著な凹みができていましたが、ミドルポジション以上は大した凹みはなかったので、ローをやや多めに(凹みが消失するギリギリくらい)、ミドルからハイはに向かっては徐々に削る量が少なくなるようなイメージです。

フレット擦り合わせ後、一番低くなったフレットの高さは1.0mmよりわずかに高いくらいになりました。今回のようなスモールサイズの幅の狭いフレットの場合はこれくらいの高さがあれば、演奏性を損なうことなく、長く付き合って行けると思って差し支えないと思います。

今回のギターは電気部分のオーバーホールなども加えて昨日売りに出しました。動画でのサウンドチェックも紹介しているので合わせてご確認ください(以下リンク)。

Fender Japan ST62 Special Mod.オーバーホール済み