1979年製 Fender STRATOCASTERのサウンドチェック

当店でメンテナンスさせていただいた1979年製 ストラト。

上画像は1979年製 Fender Stratocasterです。ラージヘッドに3点止めのナローネック(ナット幅約40.5mm)、プレートとサステインブロックが一体成型されているブリッジにダイキャスト成形サドルといったその後の主流とはだいぶ異なる仕様ですが、同時期の日本製のコピーモデルでも同様の仕様の製品が多く作られていてその時代を知る人にはなじみ深いのではないかと思います。今回持ち主様のご許可もいただいた上で、大雑把な仕様やメンテナンス内容、サウンドチェック動画を以下ご紹介します。何かのご参考になれば幸いです。

 ボディ材はアッシュ。アッシュというと重さのばらつきが大きいことが知られています。本機は重たい方でした。最近「軽い楽器=音が良い」という考え方がよく聞かれますが、重量の違いによって音の傾向は推測できるものの、どちらの方が音が良いということではなく、バランスがしっかりとれていれば軽くて重くてもそれぞれ良さがあります。大雑把には重量があると生音は小さくなりサステインが長くなる傾向がありますが、80年代や90年代初頭にはそれを狙ってあえて重量のあるアッシュ材を使ったストラトタイプがハインエンド機として作られていたりもしていました。
 ダイキャスト成形のサドル。今回のメンテナンスではクリーニングを行って、錆びていたイモネジとオクターブ調整ビス、スプリングを交換。
 50年代から70年代前半までのプレスサドルは板を曲げた構造で振動は大きくなりそうですがこちらは体積があり重量もあるのと、弦高調整のビスがプレスサドルよりもしっかりサドルにかみ合う構造なので、サドル自体が比較的暴れにくくその分サステインが長くなるのではと想像していますが実際どうでしょう。
 電気部分はおそらくはオリジナルパーツですが配線のやり直しがされている可能性があります。現在の持ち主様は本機を中古で入手されているのですが、ボディ木部にはハムバッキングPUを入れるようなザクリ加工がされていたので、以前の持ち主さんの時代に改造をしていたか試みたのではないかと推察。リアPUが反対向きについてるのはつけ直した際に反対向きになったとか・・・反対向きだと3,4弦のポールピースの高さが逆にはなりますが、大きな問題はなく、現在の持ち主様もこの状態で弾いてきていて慣れていると思うのでそのままにしてあります。
 ピックアップの直流抵抗値は3~4kΩくらいでした。ケーブルの太さなどにもよるので一概には言えませんが、当時は高域のキラキラした音が好まれていたので出力低めに作ったのかと想像。コンデンサーは70年代フェンダーではよく見かけるサークルDがついています。
 メンテナンス前のフレット、ナット、指板。ご依頼時に伺った症状は「以前は弦高下げても大丈夫だったが、久しぶりに弾いたらかなり弦高を上げても1弦はハイポジションのチョーキングが詰まる」というもので、実際1弦12フレットで弦高約2mmもあったのに音詰まりしていました。もとより指板Rの都合で弦高はそれほど低くできない仕様ではあるもののさすがに2mmでつまりが出るのは問題があります。今回の場合、フレットが浮いている箇所が散見されたのと、ネックに角度をつけるマイクロティルトを利かせることでかえってハイ起き状態になっていた可能性も考えられました。
 浮いたフレットをしっかり固定しなおしてからすり合わせをしたところ大分弦高を下げられるようになりました。今回のすり合わせでは2~5弦のハイポジション側は音詰まりを軽減させるために少し多めに切削してRを緩くしています。
 ナットは開放弦のバズなどがあり限界まで摩耗していたので新調しました。新しいナットはラクダ骨から削り出したものです。本機はナローネックでナット幅は40.5mmくらいなのでそれに合わせて新しいナットの弦間距離は6.8mmに設定。ムスタングタイプではこれくらいの弦間は普通ですがストラトでは珍しいです。
 ブリッジの位置の都合でネック取り付けに角度をつけないとサドルの高さが適切に調整できなかったのですが、前述の通りマイクロティルトで角度をつけるとネックを持ち上げる作用点がネックの先端の一点でボディとのジョイントビスの締め具合によってはネックをハイ起きにさせてしまいやすいと考え、あえてマイクロティルトは使わずに専用のシムを制作、取り付けてネック角度を調整しました。シムはハードメイプルの板材から制作。
 ネックの両サイドは塗装が剥がれて手にひっかかりがあったのでフレット浮きの補修と合わせて樹脂で接着の上で少し切削して面を出し直ししました。

 元々フレットがスモールサイズで塗装指板であることやこれまでの経年の摩耗でそこそこ低くなっていました。ジャンボフレットやナローハイフレットに慣れている人だとすでに弾きにくさを感じる摩耗具合ではあったと思いますが、これに慣れている持ち主様の立場ではここからすり合わせをしてさらに低くなっても、すり合わせで削る量を最低限にしつつしっかり調整もし直せば弾きにくさが増すよりもメンテ前よりも弾きやすくなる判断してそれをお勧め、フレット浮きの補修とすり合わせで対処したという経緯です。実際仕上がりにご満足いただけたかと思いますが、今後本機をさらに弾き込むにあたってより弾きやすくしようと考えた際には改めてフレット交換を検討しても良いかと思います。メイプルなど塗装が必要な材の指板の場合、フレット交換に際して塗装作業も入る都合で費用も大きくなるほか、お預かり期間も2~3か月と長くなります。メイプル指板でフレット交換を検討される場合は入院期間中の練習機はどうするかなども含めて検討するのが良いと思います。

 

最後にサウンドチェック。

まずはクリーン。アンプはFender Vibro King、エフェクトなし。

 

クランチ。歪はWEEHBO Effekte JTM Drive。

 

先のクランチをXotic BB Preampでゲインブースト。

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