オーバーホールしたFender Japan JV Serial TC’72-65 Telecaster Cutom

当店でオーバーホールさせていただいたFender Japan 黎明期テレキャスターカスタム!

上画像は当店でオーバーホールさせていただいたFender Japanの最初期製造品JV SerialのTelecaster Custom(おそらく型番TC72-65)です。現オーナー様は最近本機を譲り受けたとのことで、「まずはちゃんと弾ける状態にしてしばらく弾きこんでから必要に応じて今後どうするか考えてゆく」という方向性でオーバーホールさせていただきました。フレットの凹みが結構あり交換しても良い状態ではありましたが、とりあえずはフレット擦り合わせで対処。PU以外の電気パーツは無事なものもありつつ劣化で動作不良が多々あったので安心のため新品に総入れ替え・再配線。あとは錆びたビスも全て新品に交換し、ブリッジやペグは分解してクリーニングしました。

サウンドチェック。まずはクリーン。アンプはFender Vibro King、エフェクトなし。

もう一本クリーン。こちらは指弾きでアンプの前にごく軽くオーバードライブ(WEEHBO Effekte JTM Drive)をかけています。

クランチ。歪はWEEHBO Effekte JTM Drive。

先のクランチをXotic BB Preampでゲインブースト。

お預かり時はフレット上にかなり凹みが見られましたが、今回はフレット擦り合わせで対処。かなりフレット高は低くなり(一番低い箇所で有効高0.7mmくらい)高さのあるフレットに比べれば弾いにくくはあるもののちゃんと弾ける人であればまだ弾きこんでゆけます。入手したばかりの中古ギターの場合、オーナーさんはまだそのギターとの付き合いは浅く、メンテの方向性も固めにくいことは多いかと思います。そういった場合はギターの性格を大きく左右するようなフレット交換やPU交換はせずに多少の弾きにくさを許容して最低限のメンテだけを行うのも良いと思います。
ヘッド。元々のナットは使用継続不可なほどの摩耗だったので交換。新しいナットは牛骨無垢材から削り出しで制作しています。ペグやストリングリテイナーはしっかりクリーニングし汚れ・腐食・錆をできる限り落としました。こうした汚れは意外と振動の邪魔になるようで綺麗にするだけでも音は本来の艶を取り戻します。ペグはギアの摩耗や若干の変形もみられ動作にばらつきがありますが、現状でもしっかりチューニングできるので維持。今後動作不良が出ても現行品に簡単に交換でき心配はないでしょう。
PU以外の電気パーツは一新してさっぱりしました。ボリュームとトーンのPOTはCTSのミリ規格品でフロントはAカーブ500kΩ、リアはAカーブ250kΩに。コンデンサはOrange Drop 716P、0.022μFと0.047μF、ジャックは定番のSwitchcraft #11 mono Jack、スイッチは国産トグルスイッチ、ケーブルはFenderと同じクロスケーブルで再配線。オリジナルではPUとボリューム間はシールド線が使われていましたが、ノイズ排除の観点で考えるなら「部分的なシールド」ではあまり効果がなく不満が残るものなので、半端にシールド線は使わなくても良いと思います。 本機の場合は後からの全体のシールド処理は配線のやり直しをほとんどせずに施工可能。とりあえずはシールドはせずに仕上げ、しばらく弾きこんでから「ノイズを減らしたい」という要望が生まれるようなら全体のシールド処理をすればよいという考えです。
ピックガードの留めビス、フロントPUの吊り下げビス、ブリッジサドルの弦高調整イモネジは新品に総入れ替え。ピックガードのビスはネジ穴の傷みでしっかり締まらない箇所が多かったので簡易的な補修の上で一回りサイズが大きいものに置き換えています(単純にサイズを大きくしただけだと元々のネジ穴を余計に痛めてしまうので迂闊にまねしないようにしてください。勿論当店ではちゃんと考えて対処)。イモネジは先端が球状のオーバルタイプにしました。

ネックプレートにJVで始まるシリアルが刻印されています。(画像処理で番号は隠しています。)

Fender Japan JV SerialのギターはFender Japan最初期の品で製造から40年近くが経過しています。Fender Japanギターの立ち位置は「学生でも手が届く価格帯の楽器」であり、ハイエンド機ではなく普及機として多数流通したものだと思いますが、「価格の割につくりは良い」とか「若い頃の思い出の楽器」といったことからか現在はジャパンヴィンテージというジャンルの象徴の一つになり、状態が良いものならば定価より高い中古価格が付く事も珍しくありません。そこにはノスタルジーもありますが、経年変化で熟成した楽器としての魅力も十分に感じられることも多いためか人気は高く、強い思い入れをもつギタリストからその定価を軽く上回るくらいコストのメンテナンス依頼をいただくことも珍しくありません。とはいえ、入手したばかりのギターの場合は最初のメンテナンスはコストをなるべくかけたくないという気持ちにもなるもので、悩む方もおられるでしょう。当店ではそうしたお悩みにも出来るだけ沿いつついくつかの選択肢を提案させていただいています。そうしたお悩みを持ちの方大歓迎!

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