Greco TE-500 ネック交換・弦長変更改造例

ネック交換により弦長も変更した改造例。

ミディアムスケール仕様だったGreco TE-500をネック交換、Fenderと同じロングスケールに変更するという珍しい改造をさせていただきました。

Greco TEシリーズは70年代からFender Japan発足前までマツモクで製造されていたテレキャスターシンライン風のギターですが、今回ご依頼いただいたものはGibsonと同じミディアムスケール仕様でした。これまで当店でフレット擦り合わせ、ネックシム調整などを行わせていただいておりましたが、今回ロングスケール・ローズウッド指板・22フレット仕様に改造したいということで再入院となりました。

交換用に用意したネックは国産の無塗装・ヘッド部無成型のもので、テレキャスターのヘッド形状に加工してからオイルフィニッシュで仕上げ。また、指板はかなり色が薄くイマイチな見た目だったのですが、染色していい感じの色合いになっています。オリジナルと新しいネックは弦長はもとより幅や厚みも異なっていたのでネックポケットもかさ上げ、肉付けの上で拡幅修正しました。

交換用に用意したネック。上画像はヘッド未加工、未塗装、指板は素のままの状態。右下画像はヘッドをテレキャスタータイプに成形した状態。以前は最初からテレキャスターシェイプに加工された国産無塗装ネックが手に入ったのですが、最近扱いがなくなってしまったようで今回仕方なくヘッドの加工も行いました。その分費用も増えてしまいました・・・。左下画像は全体のオイルフィニッシュ、指板の染色、ナットとぺグ取り付けまで終えたところ。指板の染色は濃すぎると元々木材が持っていた美しい模様も潰れてしまうので控えめに行っています。染色といっても単に表面を塗装しているだけではないので、使っているうちに色がはがれることはありません。また、通常のお手入れ(レモンオイルなどでの拭き掃除など)で色落ちもほとんどしません。そればかりか、指板の耐久性も向上すると考えられます。どういった染色方法かは秘密ですが、染色用のステインやネット上で見かける髪染めなどは使用していません。
 本ネックは当店到着時、ほとんどすべてのフレットが浮いた状態でした。未塗装で販売されている以上、温度湿度の変化で木材が動く量も多いと考えられこういったことは結構あるのではないかと思います。勿論、フレットは打ち直してしっかり固定しているのを確認の上で擦り合わせも行いました。こうした無塗装ネックは特にそうですが、「
ネックとボディを別々に入手して組み立てる」といった場合、フレットの処置などで意外と手間がかかることがあり注意が必要です。
インディアンローズでの染色のサンプル。赤線から左側が処置済み、右側は未処置。樹種によっては染まりにくい、まったく染まらないものもありますがインディアンローズは比較的綺麗に染色できる場合が多いです。
オリジナルネックとのヘッド部分比較。
ブリッジは元々ダイキャスト成型のサドルのものでしたが今回スティールのブックサドルのGOTOH製に交換。弦長が変更になりましたがブリッジ位置はほぼ変更なしで対処しています。実は本機のボディサイズはロングスケールのFenderテレキャスターとほぼ同じで、ネックポケットの奥行を深くすることでミディアムスケールに対処していたようでした。実際、最初からロングスケールのTEもあったようで、ボディはほぼ共通仕様だったようです。ボディ材はセンです。
新しいネックはオリジナルよりも薄い(といってもFenderと同じくらいで特別薄いわけではありません)のでネックポケットを底上げ。また元々のポケットはミディアムスケールに合わせる都合もあってかFenderに比べるとかなり奥行きが深かったのですが、今回のロングスケール化に合わせてそれが少し短くなるように肉付け(それでもまだ少しFenderよりネックポケットの奥行は長め)。ネックポケットの底上げと奥側の肉付けはハードメイプル材を使用。奥側の肉付けは木目の方向をボディ面と垂直になるようにしました。これによりネック先端の振動がボディに伝わりやすくなることを期待したのと(TokaiのSEB構造の考え方)、もともとFenderタイプのギターではフロントPUとネックポケットの間の木部がその薄さと木目の方向から欠損しやすいのでその補強の意味合いもあります。さらに新しいネックの幅は元々のネックポケットよりも大きいので拡幅も行いました。
左画像は元々のネックを取り付けている状態。右2枚の画像は新しいネック。21フレットの位置がヘッド側へ少し移動しているのがわかります。新しいネックはつば出し22フレット仕様ですが、つばの下にピックガードを挟んでしまうとピックガードは厚みがかなりある都合で指板つば出し部が持ち上がり22フレットが他フレットより高くなってしまうのでつば下の部分のピックガードは切除しました。右端画像ではネックがボディ表面に対してほんの少し角度が付いているのがわかります。今回新しいネックに合わせてネックの底上げを行っていますが、同時にほんの少し角度が付くようにポケットの底面にスラントを付けています。実はオリジナルの状態ではシムを挟まないと弦高調整がうまくいかなかった経緯がありました。また、ネックを留めるビスとプレートはオリジナルを流用するという条件があり、そのビスの長さの都合で底上げできる量にも限りがありました。そのため限界まで底上げ、それで足りない分は角度付けすることで問題解消しています。
ボディ裏。弦長変更しましたがブリッジ位置は変更していないので、弦通しのブッシュなどはオリジナルのまま。実はご依頼をいただいた直後はブリッジの移動も検討したのですが、細部をチェック、計測して今回はブリッジ移動なしで弦長変更がベストと判断して施工しています。もっとも元々Tシリーズにはミディアムスケールとロングスケールが存在し、ボディ側はほぼ共通仕様だったようなので最初から弦長変更しやすい仕様だったとも言えそうです(とはいってもネックポケットの加工調整はそれなりに気を使いますのでそれほど容易な改造でもない)。ネックプレートとネックを固定するビスもオリジナルのものをそのまま利用。プレートはFenderよりも一回り小さいですがネックポケットの奥行がFenderよりも少し深いこともあり設置面積も広くなっているためかしっかり固定、安定しています。
改めて完成した状態。弦長が伸びネックが少し長くなったのとローズウッドの色合いのためかオリジナルよりスマートで引き締まった印象です。

音ですが、Beforeに比べAfterは張りの強いジャキジャキの生音に様変わりしました。弦長が長くなったことによる影響は大きいと思いますが、ボディの方も経年変化を経ているのでそこも影響していると推察しています。一方でアンプからの出音ですが、Fenderタイプのギターとしては比較的丸い音で生音からイメージする音とは少し異なっています。今回電気部分はオリジナルのままなのですが、PUの特性で太い音になりやすい、あるいはアースやシールドの都合などでハイ落ちする量が多めになるなどがあるのかもしれません。これはこれで味のあるサウンドで良いと思いますが、必要に応じてサーキットも見直すことでジャキジャキのサウンドにも出来るのではないかと思います。何しろ生音は元気なので。

サウンドチェック。まずはクリーン。アンプはFender Vibro Kingでアンプ直。

 

クランチ。歪はWEEHBO Effekte JTM Drive。

 

先のクランチをXotic BB Preampでゲインブースト。

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