ノーマルの2シングルコイルのテレキャスターの電気回路に工夫を加えてハムバッキングサウンド(シリーズ接続)を出す改造は比較的ポピュラーかと思います。シャープな音像が持ち味のテレキャスターですがここ一番というときに太い音が呼び出せるようになり表現の幅が広がります。実際どんな音になるかの参考として当店でその改造を行ったテレキャスターのサウンドチェック動画を紹介いたします。
クリーンサウンドでのチェック。動画前半は同じようなフレーズでノーマル(シングルコイル)とシリーズ接続(ハムバッキング)の音を比較、後半は通してシリーズ接続で弾いています。
クランチサウンドでのチェック。動画前半は通してシリーズ接続、後半はノーマルとシリーズを交互に弾いて比較。
今回の例ではToneノブを引っ張る(Pull)にすると二つのシングルコイルPUがシリーズ接続となるハムバッキングサウンドに切り替わります。ハムバッキングサウンド時は3wayスイッチはキャンセルされます。対象のギターはFender Japan のEシリアルのテレキャスター、PUは現行USA Fenderの64Telecasterセットとなっています。
この改造の詳細については以下紹介。
この改造ではノーマルのテレキャスターでも比較的簡単な処置で太い音が出せるようになりますが、方法はいくつかありそれぞれ使い勝手が異なるので、改造前にどのような使い方をしたいのかなどをよく考えておくのが無難です。主な方法は以下3つ。
①3wayスイッチを4wayスイッチに交換、再配線。
シリーズ接続の音を追加できる4wayスイッチがあります。このスイッチはオリジナルの3wayスイッチと互換性があり簡単に取り付けできます。②③の方法に比べて配線方法に少し不都合があり、ギターの仕様によってはノイズに弱い(シールド処理を行っていないギターの場合はノーマルの状態より特定ポジションのノイズが増えやすい)ポジションができる可能性があります。一般的なPUセレクターは「固い音」⇔「ミックスサウンド」⇔「太い音」のように直感的にわかりやすいシンプルな並びですが、4wayスイッチでは4段のどこをシリーズ接続にするかによってはその直感性が壊れてしまいかえって分かりにくいコントロールにもなるのでこの方法を採用する場合は「どこをシリーズ接続にするか」をよく検討する必要があります。
②トーンまたはボリュームのPOTをスイッチ付きPOTに交換し、再配線。
テレキャスターに限らず色々なギターで採用されている機能付加の方法がスイッチ付きPOTを利用する方法です。前述の例ではこの方法を採用しています。3wayのコントロールはそのままで必要に応じて一発でハムバッキングサウンドに切り替えができます。3wayスイッチのポジションがどこでも同じシリーズ接続のサウンドになります。スイッチ付きPOTはPush PullタイプとPush Pushタイプがあり前者の方が一般的ですが、操作性は後者の方が楽に操作できます。スイッチPOTをVolumeにするかToneにするかはどのように演奏したいかなどを考えて決定すると良いと思います。
③コントロールプレートに穴をあけミニスイッチを増設、再配線。
コントロールプレートに穴を開ける必要があるためか3つの方法の中では一番選択される機会が少ないですが、操作性はよく、視覚上も分かりやすい方法です。②と同じく3wayのコントロールはそのままで必要に応じて一発でハムバッキングサウンドに切り替えができ、3wayスイッチのポジションがどこでも同じシリーズ接続のサウンドにできます。
今回の例のような改造に必要なスイッチ類は一通り当店で揃っております。ネット上や書店で売られている配線改造の本ではこうした改造例はたくさん出ていますが、どれでもよいわけではなく「ギターをどう弾きたいか」「どんな時にどんな音を出したいか」などによって適切な配線、スイッチの選択、位置などが異なってきます。また、間違った配線が紹介されている例も多いのでので、判断がつかない、悩んでしまう場合は遠慮なくご相談ください。