TL Thinline Type コンポーネント制作

お持ち込みいただいたパーツを組み上げて完成したTL Thinline Type!

こちらはご依頼主ご自身が集めたボディ、ネック、PU等のパーツを当店がお預かりしてコンポ―ネント、調整をさせていただいたシンラインタイプです。パーツ持ち込みでの制作例・調整例としてご紹介します。大雑把な仕様は以下の通り。

・木材構成はサーモウッドメイプルネック、ジリコテ指板、ボデイはフレイムメイプルトップ、マホガニーバックのシンラインタイプのホロー構造。

・エイジド加工されたボデイ、ピックガード。

・PUはSeymour Duncan SH18の2ハム仕様、通常の2PUテレキャスコントロールにリアのみシリーズ/パラレル切り替えのミニスイッチを増設。ケーブルはノンシールドタイプで配線。

・金属パーツはすべてゴールドを基調としたセレクト。

 古いレスポールのようなサンバースト塗装のボディと金属パーツの組み合わせが上品な印象ですが、金メッキは劣化しやすいので、しばらく使うとボディのエイジド加工によりマッチしてきて違った魅力も出てきそうです。

サウンドチェック。まずはクリーンサウンドから。アンプはFender Vibro Kingでアンプ直。

 

クランチ。歪はWEEHBO Effekte JTM Drive。

 

先のクランチをXotic BB Preampでゲインブースト。

 

「ジリコテ指板」「サーモウッドネック」という組み合わせは初めてだったのですが、違和感ようなものは全くなく、クリーンでも歪でも、あるいは生音でも気持ちよく弾ける音に仕上がったと思います。2つののハムバッカーの組み合わせだけでも楽しめますが、リアのパラレルがサウンドバリエーションを加えているところも面白いです。リアパラレルのみだけでなく、リアパラレルとフロントのミックスサウンドやリアのトーンを絞った音なども私にとって気持ち良いポイントが多く興味深い仕上がりになりました。

弦はDaddario EXL110(10-46)でレギュラーチューニング、弦高は1弦12フレット1.3mm、6弦は1.8mmに調整してあります。

以下、各部詳細。

今回持ち込まれたボディは米国の有名パーツブラン土のもの。フレイムメイプルトップ、マホガニーバックのホロー構造はフェンダーにはない興味深い仕様。ボディの塗装とエイジド加工は持ち込まれた時点でされていたものですが、ピックガードについては当店でエイジド加工を加えています。また、ボディ本体もネックポケットの修正(ネックの大きさに対してポケットが若干小さかった)の上でネックを取り付けてセンターラインを確定し、その上でブリッジ位置を決定してネジ穴をあけてブリッジを取り付けるなどの作業を施工しています。
PUはご依頼主のチョイスでSeymour Duncan SH18 Whole Lotta Humbucker×2。SH18はFenderピッチのTrembuckerはなく、今回は通常のGibsonサイズのものをマウント。このためリアは1,6弦のポールピースが弦よりもやや内側に来ていますが特に問題なく演奏できます。勿論この辺りは事前にご依頼主様のご意向を確認しています。
コントロールは通常のテレキャスタイプと同じく3wayスイッチにマスターボリューム、マスタートーンにリアPUのシリーズ/パラレル切り替えのミニスイッチを増設してあります。ミニスイッチ増設にあたってはコントロールプレートに取り付け穴を開けていますが、ミニスイッチがなるべくボリュームやトーンの操作の邪魔にならないように、ボリュームとトーンから等距離かつ可能な限り(木部の加工をせずに済む範囲内で)ボディ外側に位置決めしています。スイッチのノブは既製品でゴールドメッキで適当な形状のものはなく、当店でブラス削り出しで制作したノブを取り付けさせていただきました。このノブはイモネジでスイッチに固定する仕様ですが、このイモネジはブリッジサドルと同じ規格のものを使用しているので弦高調整用のレンチで取り外しが可能です。
電気パーツもご依頼主さんのチョイスが中心。スイッチはCRL、キャパシタはJupiter Condenser Retro Red Capacitor 0.02μF。POTはCTS Custom POTで500kΩのAカーブ。ケーブルは位置が固定されている配線箇所はWestern ElectricのNOSのAWG22単芯線で配線。半田はKester44。ジャックとミニスイッチから出ているケーブルは現行FenderでおなじみのCloth Wireの撚り線で配線。これはジャックが緩んだ際や、ミニスイッチは向き変更の際の断線トラブルを避けるためのチョイス。今回使用したミニスイッチではリアPUのみのシリーズ/パラレル切り替えですが、使用するミニスイッチによってはリアとフロントを同時にシリーズ/パラレルあるいはコイルタップの切り替えしたり、「ノーマル」「コイルタップ」「パラレル」と3つの切り替えを行える仕様なども可能です。もっとも使用目的によっては「コイルタップ(スプリットコイル)」と「パラレル」はそのサウンドの差が少なく、選択肢が多いほどややこしくもなるので「どういう使い方をしたいか」を念頭に仕様を決定するとよいかと思います。
ブリッジはGOTOH製のブラスサドルの6wayタイプ。ボディには元々弦を通す穴はあけられていましたが、その穴を過信せず、ネックを取り付けてからしっかりブリッジの位置を決めて取り付けています。
ジャックはホローボディでボディ側面壁の厚みのが通常のテレキャスタイプのジャックマウントができないためレスポール風にプレートを介して取り付け。ジャックを納める穴はもともと加工されていたのでその穴の位置に合わせて位置決めしています。
サーモウッドメイプルの色合いが渋いネック。塗装はクリアを少し吹き付けただけの超極薄で使用感が早く出てくると思われますが、元々ボディにエイジド加工がされているのでより見た目がマッチしてくると予想できます。指板材に使われているジリコテという木材は日本では「シャムガキ」という名前で銘木店などで売られている材です。材質は硬質で指板材として適した性質を有していいると思います。この画像では分かりにくいですが独特の模様も目を楽しませてくれます。既製品エレキギターでの使用例は少ないですが、手工品のアコースティックギターやウクレレなどの指板やサイドバックでの使用例は増えてきているようです。ローズウッドの規制の影響でこういった材を使ったネックも作られるようになったのだと思いますがジリコテ自体も決して安い材ではないですし、「代替材」というよりも単に「新しい選択肢」と見た方が良いかと思います
ジリコテ独特の模様が面白いです。この指板はそれほどではないですが蜘蛛の巣のような模様を呈しているものもあります。・・・フレットは大きめのものが最初から打たれていたのですが、一部フレットの高さがばらついていたのと精度を高めるために改めてフレット擦り合わせを実施しました。22フレット仕様でRはハイポジション側に行くい連れてフラットになるコンパウンドラジアスです。
擦り合わせと同時にフレットの両端も左手移動時の引っ掛かりを軽減するための面取り加工を加えています。ナットはもともと樹脂製が取り付けられていたのですが、改めて牛骨無垢材で制作しなおしました。ナット幅は42.5mmで日本製ギターと比べれば若干広め、欧米では標準的かと思います。ナット部弦間ピッチは7.1mmで制作。
ヘッド。サーモウッドメイプルの色合いとゴールドパーツの組み合わせがいい感じです。ペグは現行のクルーソン。ペグブッシュの穴が少し小さかったので適切なサイズの穴に修正した上で取り付けています。今回のボディとネックは同じメーカーのものなのですが、ネックポケットやあらかじめ空いている穴のサイズがどこまやや小さめでした。これは「取り付けるパーツに合わせて微修正してジャストサイズにする余地がある設計」という事なのかもしれません。メーカーによってはネックポケットがぶかぶかのことも結構ありますが、その場合は「塗装によってネック幅が無垢の時より大きくなることを想定」ということかも・・・真意は定かではありませんが、この辺に対してうまく対処するのがコンポーネント制作の一つのポイントかと思います。

Fenderタイプのギター、特にテレキャスタータイプ、ストラトタイプは既製品のボディ、ネックが国産品、輸入品ともに比較的手に入りやすく、好みのパーツを集めて世界に一本のカスタムギターをDIYでコンポーネントすることも十分可能かと思います。ただ、本記事の通り、より高いセッティング精度を求めるならネックポケットのサイズやペグブッシュやストリングブッシュの穴のサイズ微調整、センターライン等を厳密に合わせた位置決め、フレット擦り合わせやナット調整等も加える必要性が出てきます。当店ではこういったことも踏まえたコンポーネント制作も請け負っておりますのでご興味ある方は是非ご相談ください。

今回はスイッチのノブはブラス削り出しで制作、ピックガードはエイジド加工も行っています。これらは別に記事(以下リンク)にしてありますのでご興味ある方は是非ご参照ください。

 ブラス削り出しスイッチノブ

ピックガードのエイジド加工例

 

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