ST Typeギターのレストア/オーバーホール例:1978年製 Tokai ST60

78年製と思われるTokaiのストラトタイプ のレストアレポート!

画像は1978年製造と思われるTokai(東海楽器製造)のST Type、ST60です。現在の持ち主様よりレストア/オーバーホールのご依頼をいただき対応させていただきました。

処置前の主な問題点や持ち主様のご要望は以下の通り。

  1. フレットの摩耗・浮き上がり。かなり弦高を高くしても音詰まりする
  2. 音がちゃんと出ない。ボリューム等コントロール部のガリ、接触不良、部品の劣化等
  3. ブリッジのところで頻繁に弦切れする
  4. 指板Rの都合でそもそも弦高は低くできない仕様だができれば低くしたい。

以上を中心にメンテナンスを実施した結果、ストラトタイプらしい音と新品に負けない演奏性を確保できたかと思います。

ご興味ある方は以下詳細もご覧いただければ幸いです。

 ボディ材は木目のきれいなセン。米Fenderで使われたいたアッシュ材に似たきれいな木目が特長で同時期の国産のコピーモデルではよく使われていました。この材、アッシュの代替材扱いで格下にされがちですが経年変化を経たものは意外といい感じに鳴ってくれるようになることもあって面白いです。PUカバーやボリュームノブの色は経年で焼けたものでいい感じに貫禄が出ています。今回スイッチを交換していますが、そのノブは焼けたパーツに合わせて染色したものを取り付けています。アームのキャップは材質の違いからか、あるいは交換されていることが多いためか同じように染まっていないものも多いので今回は染色はせずそのまま。
 画像の矢印のノブが今回取り付けたノブ。画像右上段が染色前のノブ。染色は狙った色にするのが難しいので今回は市販品を3色用意して同時に染色し、比較的色合いが近くなったものを選びました。
 ブリッジプレートの弦通し穴の弦が当たる箇所(緑矢印)とサドルの弦通しの弦が当たる箇所(黄矢印)に弦の痕が強くついてバリも出ていました。これらが原因で弦が切れやすかったと考えられます。しっかり面取り加工を施して弦切れ対策としました。
 ブリッジにはもう一つ問題がありました。画像ではわかりにくいですが矢印の箇所に深めの傷がついています。これはサドル高さ調整のイモネジ(一般的なくぼみ先タイプ)の先端でついた傷と思われます。手で触るとバリも出ているのがわかりました。そのままくぼみ先のイモネジだとサドルの位置によってはプレートの傷が邪魔してオクターブ調整がやりにくく、傷のある箇所だと2本のイモネジにかかる力のバランスも悪くなりそうなのでOval(丸先)のイモネジに交換して対処。交換したovalタイプは緩やかな球面になっているので引っ掛かりが少ないのと、弦高調整によってサドルの高さ・角度が弦毎に異なってもブリッジプレートに触れる面積は変わらないので弦毎のばらつきが出にくいと考えられます。
 プレート上の傷の位置から以前の持ち主さんがオクターブを合わせずに低音弦サドルが過剰にネック側に位置した状態で使っていたことが想像できます。このサドルの位置が弦通しの弦が触れる箇所に強く弦が干渉する要因だったと推察。
 ネック。指板はローズウッドのラウンド指板。いろいろな年代の仕様が混在する面白い仕様です。
 元々のスモールフレットから国産ジャンボフレット(三晃SBB-215)に打ち換え。フレットエッジの面取り仕上げは勿論、指板エッジ部の面取り加工も程よく加えて演奏性を高めました。ラウンド指板でローズウッドの層が薄かったのでフレット足がメイプルの層にまで届かないギリギリを狙って指板の切削修正はわずかな量にとどめています。それでもハイポジション側は元々よりも若干緩いRに修正、弦高も少し低くできるようにできました(1弦12フレット1.4mmほどでセットアップしても1音半チョーキングで音詰まりしないくらい)。
 画像左は古いフレットを抜いたところ。型番ST60を示す60の刻印があります。画像右は仕上げが終わった段階での様子。60の刻印は画像ではわからなくなっています。その分指板を修正して弦高を低くできるようにしたということです。
 ナットはラクダ骨材から削り出し。画像右は弦を入れる溝の仕上げ途中の様子。溝の内壁を磨いて摩擦をできるだけ少なくなるようにしています。
 今回ペグの研磨クリーニングは依頼されていないのですが、弦を巻き付ける部分(ペグポスト)の表面腐食は落とさないとアーム使用時の過度な摩擦を生むのでペグポストだけ研磨しました。
 そのままネックをつけるとサドルを一番低くしても弦高がかなり高くなってしまう状態だったので専用のネックシムを制作・仕込んでネック角度を修正。これによってブリッジサドルを適切にセッティング。今回はシムが必須の状態でしたが、「サドルを一番低くしたら何とか弦高も満足できた」といった場合もシム調整をした方がよりバランスが良くなるケースは多いと思います。サドルが低過ぎると高さ調整イモネジによる突っ張りが少ない状態になりやすく、演奏時の振動でサドルやイモネジが共振してしまったりすることでサステイン不足や異音混入することがあります。適切にサドルを突っ張った状態にすればこれらを回避しやすくサステインも稼げます。
 配線。ピックアップはオリジナルをそのまま利用、他は定番パーツを採用。セレクタースイッチはOAK5way、POTはCTS Custom POT ×2とBournsのPush Pull Switch POTいずれもA250Ωに交換。トーンはネックポジション用とブリッジポジション用に変更し、それぞれトーンの効き具合に差をつけるためコンデンサーは2個の容量の異なるセラミックディスクを取り付けています。プッシュプルスイッチプルでどのポジションでもNeck PUがOnになるよくあるカスタム配線です(テレキャスターのようなNeck+Bridgeのハーフトーンが出せる)。配線材は古河電工BX-S。画像では隠れていますがジャックはSwitchcraft Mono Jack #11。

サウンドチェック動画。まずはクリーンから。アンプはFender Vibro Kingでエフェクトなし。

 

クランチ。歪はWEEHBO Effekte JTM Drive。

 

先のクランチをXotic BB Preampでゲインブースト。動画中、大き目のアームダウンをしたところで3弦のチューニングが大きく狂ったので動画撮影後に3弦周りを再調整しました。

 

同時期製造のGrecoのST Typeのレストア/オーバーホール例もご参考にどうぞ↓

http://heavygaugeguitars.com/?p=13870

 

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