1968年製 Guild X-175メンテナンスとサウンドチェック

当店でメンテナンスさせていただいた68年製のGuildフルアコ、X-175。

メンテナンスでお預かりした1968年製Guild X-175です。ミディアムスケールにプライウッドのボディは17インチ幅の深胴、オリジナルのハムバッキングPUを2機搭載しています。当店で行ったメンテナンスはフレット擦り合わせとナット交換、ネック調整などの基本調整です。今回交換したナット以外はオリジナルパーツのままと思われます。弦はDaddario EJ21(12-52のラウンドワウンド弦、3弦巻弦)をレギュラーチューニングで張り、弦高は1弦12フレット1.4mm、6弦は1.9mmほどに調整しました。

サウンドチェック。最初に指弾き。アンプはFender Vibro Kingでエフェクトなし。

 

ピック弾き。

オリジナルのハムバッカー。お預かり時は弦からPUがかなり離されていて音が極端に小さくて心配だったのですが、PUを程よく弦に近づけることで問題ない音量になり一安心。
当時のデザインのノブ。トーンの効き方がフロントとリアでかなり違っているのですが、これは元からか、それともキャパシターの容量が大幅に変化するなどの経年劣化のためか。
内部にシリアルと機種名が手書きされたラベルが貼られています。このシリアルを元に製造年を特定できます。(セキュリティのため、この画像ではシリアルNoは写らないように撮影しています。)
ヘッド。ペグはグローバー。突板がヘッド全体より一回り小さくなって白い縁取りが見えます。想像ですが、元々は縁取りはなく、突板が経年変化で収縮したことで下地が露出して縁取りのように見えているのか・・・。ペグを留めているナット回りの突板が波打っているのも収縮が進行した名残ではないか・・・実際はどうなんでしょう。
限界を超えていたナットは今回新しく牛骨材で作り直しました。ナット幅は約42
mm。ナットと突板の間に隙間が見えるので「ナットの厚みがあってないぢゃないか!」とご指摘をくらいそうですがさにあらず。これでもちゃんとナット取り付けの溝に新しく作ったナットがしっかりはめ込まれています。通常は突板とナットの間にスペースは設けないと思いますので、これも突板収縮説の根拠ですね。勿論演奏に支障があるものではないっですし、こういった経年変化が貫禄として感じられるのがヴィンテージギターの楽しいところかと思います。
今回フレット擦り合わせを行っています。バインディングの処理からオリジナルのフレットと判断できます。擦り合わせにあたってはフレット浮き箇所の補修、荒れていた指板表面を極々薄く研磨、手触りを良くしています。

最近復刻機も販売されているX-175、調べてみるとオリジナルの製造数は少なく、ヴィンテージギターとしては珍しい存在のようです。17インチ深胴だとGibsonのL5やその下位ランクバージョンのL7が思い浮かびますが、それらは基本的には高価な単板ボディ。鳴りを抑えたプライウッドボディで17インチ深胴という仕様はいいところを狙ったギターだったのかもしれません。今回はとても興味深いギターのメンテナンスをさせていただきました。ご依頼主様に感謝!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です