フレット擦り合わせ Before After ③

フレット擦り合わせ例、第3弾。

フレット擦り合わせの例3例目、Before/After③はにと同じくレスポールタイプです。上の画像がフレット擦り合わせ前のフレット&指板の様子。減りの程度としては軽度ですが、前回の例②に比べればやや減りが進んでいる状態でした。上の画像だとローポジションにほんの少し弦の痕がついていて全体的に曇っているだけのように見えますが・・・

一番減りが顕著だった2フレット。Before画像ではっきりとした凹みがあることがわかります。こういった凹みは1~9フレットくらいにかけてついていました。After画像では凹みとフレットの全体的な曇りが解消されて綺麗になっているのがわかるかと思います。削った量ですが、Beforeの2フレットの一番へこんでいる箇所(3弦の直下)のすぐ脇のへこんでいない部分の高さが1.25mmくらい、Afterで同じ個所を測ったところ1.225mm前後。当店では凹みの底の部分はなるべく削らないように(フレット全体の切削量がなるべく少なるように)心がけて擦り合わせ、一番へこんでいた箇所の底がAfterのフレットの頂点になっています。つまり今回のフレット擦り合わせでフレットが低くなった量は0.025mm前後くらいという事になります。目測では差が全く分からない領域の数値で(一般的なノギスの測定限界がこのくらい)、そのことからも「軽度の摩耗の対処でフレット擦り合わせをしてもそれほどフレットの高さは変わらない」という事はわかるかと思います。勿論「必要以上に削らないようにする」ということが大前提。
7フレット部分のBefore/After。Before画像では2フレットに比べればわずかですが、プレーン弦側の凹みが見られます。フレットの凹みは1,2フレットのプレーン弦側に顕著に付いてしまう事がもっとも多いですが、リードギターの練習をよくやっている人はこの画像のようにミドルポジションにも凹みができていることがあります。先の画像もそうですが、Beforeはフレット擦り合わせ前にマスキングテープで指板を保護したところで撮影。Afterはフレット擦り合わせを終え、指板の専用オイルによるコンディショニングまで終えたところです。
今回フレットの両端の仕上げは元々バリなどもなくちゃんと仕上げられていましたが、フレット両端面のスラント具合がもう少し緩い方が左手の移動がよりスムーズになると考え、面取り加工をやり直しました。真ん中の画像は当店のフレット擦り合わせの中間工程で粗削りで形を整えたところです。フレット上面に赤い線が入っていますが、赤い部分についてはこの画像の時点で曲率はなくフラットな面になっています(今回の場合この画像の時点で0.5mmくらいの幅)。当店ではフレット上面を完全な曲面にしてしまうと弦を抑える力が点でフレットにかかってしまうため早く凹みが生じ、フレットの耐久性を落としてしまうと考えています。そこでフレット頂上にある程度の幅でフラットな面(厳密にはほんの少しだけ丸みがある状態)を設けるようにしています。フレット上面の切削でフレット高さをある程度揃えてから、フレットの形を整える際にフレット上面に赤で色を付け、その幅が任意になるように両サイドを削ってフレットの断面形状を大まかなに整えたところが上画像中央。この後さらにフレット上面のフラットな部分とフレット麓側の曲率のある部分の境界部分の面取り加工を行い、最終仕上げの工程を経てAfterのような形状になっています。
ネック側面。Before画像は撮り忘れてしまったのでAfterのみ。もともとの状態よりもフレット両端エッジ部を丸くして手触りをよくしました。
最後にフレット擦り合わせ後の指板全体の様子。これで新品の時より弾きやすくなると思います。

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