TelecasterをEsquireにコンバート!

Fender Amrican Special TelecasterをEquire化!

「2ピックアップのスタンダードなTelecasterを1ピックアップ仕様のEsquireへコンバート」という改造をさせていただきました。ベースにしたのはFender American Special TelecatserでフロントPUを取り外し、ピックガードを交換、残るリアPUもヴィンテージスタイルのものに交換(Fender Texas SpecialからSeymour Duncan STL-1Bへ)、そしてEsquireの肝となるコントロール部の配線をEsquire配線に変更。この配線は簡略化した方法(Neck Positionが単なるハイカットサウンドになる配線)もあるのですが、今回は依頼主様の強いこだわりでFenderオリジナルの配線(Neck Positionがハイカットだけでなくローも程よくカットされた扱いやすいサウンドになる配線)に倣いました。

ピックガードを1PU仕様へ交換すると外観はもうEsquireです。右のピックガードが元々のもの。

Esquireの肝となるのは独特のコントロール配線によって1PUというシンプルな仕様にもかかわらず、テレキャスターらしいToneを介さないピュアなトレブリーサウンドは勿論、一般的な可変Toneを介したサウンド、まろやかな音色のプリセットハイカットサウンドからならサウンドバリエーションの広さかと思います。

コントロールパネル部の配線。スイッチやPOT、ジャックは通常のテレキャスターと同様ですが、キャパシターを3つも使い、さらに抵抗も加わるのでかなり込み合っています。そのため、通常POTの背面に半田付けするアースを側面に変更するなどしています。今回プリセットハイカットポジションにはOrange Drop PSの0.05μFを2つ使用していますが、これがでかいので、スペース的にはぎりぎり(もともとザクリが狭いということもあります。2つ下の画像参照。)。Orange Dropの足は内部でパーツが動いた際にショートしないようにグラスチューブで絶縁、画像では分かりにくいですが、念をいれて樹脂でコーティングしている箇所もあります。
可変トーンにはFenderの復刻Wax Paper Capacitorを使用。このキャパシター一つでOrange Dropの4~5倍の価格!

 

American Special Telecasterのコントロール部ザクリ。丁度ボリュームPOTが収まる部分が浅く、Orange Drop は取り付けの向きによっては収まらないので、まず各パーツをマスキングテープで仮留めしていろいろ試して取付け位置と向きを決めました。ザクリ底面の黒い部分は導電塗料(シールド)。本機はもともと導電塗料の上から着色・トップコートを塗装していて、丁度ボリュームが収まる部分にアースをつなぐラグがねじ止めされていました。このラグがあると、Orange Dropが収まらないので、シールドのアースはスイッチ側の余裕のあるスペースに移動。元々ラグが止められていた穴は埋めて改ためて導電塗料を塗布しています。

現代のキャパシターは0.05ではなく0.047μFという容量での製造が主流ですが、今回はオリジナルEsquire回路にこだわり、あえて0.05μFで現行品が手に入るOrange Drop PSとFenderの復刻Wax Paper Capacitorを選択。マニア間で人気のNOSキャパシターも入手可能ですが、これらは経年劣化で容量が極端に変化していたり、元々の容量誤差も±20%と大きかったりなど、電気的には回路図通りにならず再現性が低いと考え除外。同じ理由でプリセットハイカットに用いる3.3kΩの抵抗も仕様こそ古いタイプですが、現行品です。ケーブルは現在のFenderでも使用されているCloth Wireのレプリカ、半田は現行Kester44です。

今回Esquireへの改造に際して、ナット交換(オリジナルは樹脂製、これを牛骨に変更)やフレット擦り合わせも実施。ストリングリテイナーをカモメ型に変更、さらに3,4弦にも1個追加。ネックプレートはFreedom Custom Researchのブラス製3mm厚に交換するなどサステインが増す方向のカスタマイズを加えています。

今回弦はDaddario EXL145(12~54、3弦プレーン)という極太弦をレギュラーチューニングで張って、弦高1弦12フレット2.0mm、6弦は2.5mmでやや高めに調整。依頼主さんは元々11~のセットを張っていたのですが、今回さらに太い弦に変更です。幸いトラスロッドの余裕が十分で、しっかり調整できています。

サウンドチェック。アンプはFender Vibro King、ケーブルはBold CableのFATでアンプ直。最初の動画は各ポジションのチェック。次動画ではプリセットハイカット(Neck Position)と可変トーンを絞り切った音(Middle Position)を比較。

以上の動画では特に②ではMiddle Positionでトーンを絞り切った音とNeck Positionの音の差が出やすいようにアンプのTrebleとMiddleは少し上げています。

Middle Positionで可変トーンを絞り切った音は通常のギターと同じくブーミーさが強く、例えば5,6弦のベース音も含めた3和音や4和音だとバランスも悪いですが、プリセットハイカットに切り替えると、いい感じにブーミーさが解消されてた使いやすい音になり、思いのほか弾いていて楽しいです。正直なところ「フロントPUなくてもいいじゃん!」と思ってしまいました。トーンを絞った音でもハーモニクスが再現されやすいためか音・フレーズの表情付けもやりやすいのはリアPUらしいですが、通常フロントPUで弾くようなJazzなフレーズも行けると思います。

動画②だと、生音が結構前に出てきてしまっているのと、僕の弾き方とアンプのセッティングのせいかNeck Positionの音がトレブリーに感じるとのご指摘があったので、生音が前に出すぎないようにアンプのセッティングを変更し、やわらかいピッキングを心掛けてNeck Positionの音を取り直してみました。

オリジナルEsquireのNeck Positionは同年代のTelecasterと同じく「プリセットハイカット」といった呼ばれ方をしますが、回路的にはロー側もカットしています。ハイのカット量はMiddleと同じですが、ロー側のカットも加えてバランスを調整されていることで、Middle PositionでToneを絞り切った音に比べてすっきりした印象の音になっているのがポイントかと思います。対して同年代Telecasterのプリセットハイカットはローカットは組み込まれていないうえ、ハイカットの量もより多くなるキャパシタを採用していて、Middle PositionのToneを絞り切った音よりももっとブーミーなサウンドで同じ「プリセットハイカット」でもEsquireとTelecasterではかなり差があります。Esquireというと「単に1PUのテレキャス」と見てしまいがちですが、実はしっかりとTelecasterと差別化されていてさすがLeo Fenderだと思います。むしろ、生産終了まで回路変更がなかったことを考えるとリアPU一発のソリッドギターとしての完成度もかなり高かったということでは・・・

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