ピックガードの修正、側面テーパー変更、ねじ穴の位置修正の例

Fender Japanの初期ジャズベースのピックガードをヴィンテージに近づけるためにセルロイド製に交換。ヴィンテージではピックガード側面のテーパーが現代よりも緩かったのでそれの再現も狙って側面加工もしてあります。

フェンダータイプのギター・ベースでは交換用のピックガードの既製品が多数流通しており、比較的簡単に好みの色や柄のピックガードに換装できます。が、実はそういったピックガードに交換する際「ネジ穴が合わない」「形・サイズが微妙に合わない」「微妙にデザインがことなる」という事もよくあり、以外と手間がかかったり、自分ですべて対処するには難しすぎたりするケースも多いようです。今回はそういった「別売りピックガードの取り付け」と「ピックガードのデザイン変更改造」の例です。

今回の初期Fender Japanのジャズベースの持ち主さんからの依頼は「ヴィンテージ仕様に近づけるため、ピックガードをセルロイド製に交換したいが、入手したピックガードだとサイズやネジ穴位置がかなりずれていてそのままでは取り付けられないので必要な対処をお願いしたい。また、ヴィンテージではピックガード側面のテーパーが現行品よりも緩く、ピックガードの積層構造がよりわかりやすく目立つが、その仕様に近づけたい」というものです。以下詳細を紹介。

持ち込まれたジャズベースとセルロイド製のピックガードを合わせてみたところ。ネックポケット部は無理に押し込めばはまりましたが、そうするとピックアップが入らないし、全体的に歪みが大きく出る状態。コントロールプレート部とは重なってしまってまったくフィットしませんでした。
各部を拡大。ネックポケット部は黄矢印の位置がタイトすぎる状態で少し広げる必要あり。コントロールプレート部分は赤矢印の側がプレートと重なってしまう部分を削って形を整えます。一般的にはコントロールパネルとピックガードの間にほんの少し隙間があるくらいでもよいと思いますが、今回はドンピシャにします。全体的にネジ穴はほとんど合いませんでした(最終的に再利用できたネジ穴は一か所だけ)。全体のつじつまが合うように、なおかつ、見た目のバランスが崩れないように慎重に削る箇所を決めてから削ります。このピックガードは上層からトートイズ、白、黒、白の4層構造ですが、側面のテーパーを緩くしてもう少しこの4層構造が目立つようにしたいという希望に沿って側面の削る加工も実施。
側面のテーパーの違い。左側は現行の多層ピックガードの側面(対象機のオリジナルピックガードはなかったので製造時期の近いFender Japan Jazzmasterのピックガードで比較)。右側は今回のピックガードで当店でテーパーを緩やかにする加工を加えた後の状態。もっとテーパーを緩くすることも可能ですが、今回は白黒白の上側の白層に下の黒層が透けていて、テーパーを緩くしすぎるとその透けがより顕著になり,
かえって4層構造がぼやけて見えると考えて画像の角度にとどめました。
取り付けるのに不都合のないように形状を微修正し、なおかつ、側面のテーパー加工も完了したところ。今回のようなセルロイド材のピックガードは、研磨剤で磨くことで切削面(側面テーパー部)を光沢のある状態に仕上げることができます。これは現在一般的な塩ビ製のピックガードではできないことです。
加工&仕上げ後の側面テーパー部。施工前の画像と比べると、テーパー部の幅が少し広くなっているのと、表面に光沢があるのがわかると思います。
元の状態では各部に干渉してしまっていた部分もぴったり収まる形になりました。しかし、まだネジ穴が合っていませんので、この後にネジ穴の位置変更と修正を加えます。
元々のネジ穴を埋めて新しいネジ穴の位置決めを行った状態。埋めた箇所に小さな穴があいていますが、その穴が新しいネジが入る位置。もともとのネジ穴との位置の違いが判ります。
 古いネジ穴はいろいろ検討した結果、1か所だけそのまま再利用、他はいったん穴を広げてから、今回はマホガニーの丸棒で埋めています。埋める材ですが、当店では簡易的・応急的な処置の場合を除いてなるべくギターに使われる木材を使用します。古いネジ穴を広げる際は、ドリルを使いますが、そのままドリルを使うと塗装を巻き込んで割れてしまう懸念があるので、ドリル刃が塗膜に干渉しないように古いネジ穴の上部を使用するドリル径より若干広く面取りもしています。
処置済みのピックガードを取り付けたところ。ピッタリ収まっています。ネジは新しいものを取り付けていますが、古いネジ穴を1か所再利用している都合でオリジナルと同規格のものを使用しています。ピックガードを取り付けるネジの規格はまちまちで、ご自分で用意するとサイズやネジ山が合わないことが多いと思います。当店では一般的なサイズは大体取り揃えていますので、その辺もご相談ください。
側面テーパー部拡大。テーパーの違いもそうですが、オリジナルのままだと、側面は切削機械で削ったままで機械の刃の痕も残っていましたが(そういう仕上げが普通です)、今回のように綺麗に磨くことで元よりも格段に見栄えが良くなったと思います。お高いピックガードなので(セルロイド製は定価一万円前後、塩ビ製の同型の3倍くらいします)、見栄えにこだわりたくなりますね。
コントロールパネル部もドンピシャです。

当店では今回のようなピックガードの微修正やネジ穴の位置変更などの修理・改造も承っています。ご興味のある方は勿論、自分で挑戦しようとパーツを集めたけど思ったようにいかないという方、遠慮なくご相談ください!ご相談の際はできるだけ実機をお持ち込みいただく事をお勧めいたします。

 

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